減塩は外食でも心がけたい e-umi / PIXTA(ピクスタ)
日本では成人の3人に1人、高齢者の3人に2人が高血圧と診断されている。高血圧は言うまでもなく脳卒中や心臓病のリスクファクターであり、その予防と治療は今や国民的な課題。そこで大切なのが、毎食の塩分コントロールだ。
厚生労働省が推奨する日本人の1日当たりの食塩摂取量の目標値は、男性が9.0g未満、女性が7.5g未満。高血圧治療のガイドラインでは6.0g未満を目標値としている。しかし、平成23年の調査では、1日当たり、男性が11.4g、女性が9.6 gで、ほとんどの日本人は必要量をはるかに超える食塩を摂取しているのが現状だ。
その状況を改善しようと「かるしおプロジェクト」と題して、さまざまな減塩食の提案をしているのが、心臓疾患や血管疾患の専門病院である国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)である。
特に話題を呼んだのが、発売から2年で33万部を売り上げたという料理本『国循の美味しい! かるしおレシピ』(セブン&アイ出版)だ。
一食当たり「2.0g未満」という驚異的に少ない塩分量でありながら、「日本一おいしい」と言われる国立循環器病研究センターの入院食を、家庭でも再現できるという一冊。「食材を八方出汁で下茹でする」「煮るより蒸して下味を生かす」「とろみで味の絡みをよくする」など、長年培ってきた知識を駆使し、わずかな塩分でも素材の味を引き出すことができる多くの工夫が紹介されている。
とは言っても、家庭で食材や調味料をきちんと計量して少人数分の献立を整えるのは、どうしても手間ひまがかかるもの。「血圧は気になるが、忙しくて料理に手がかけられない」という人も多いだろう。
減塩のビジネス化で健康増進
そこで国立循環器病研究センターは、2014年11月、市販品を対象に認定マークの表示を認める「かるしお認定」をスタートさせると発表。多くの人が手軽に減塩できるよう、市販のおいしい減塩食品を増やしていく取り組みだ。
認定基準は、類似する食品の平均的なナトリウム含有量に比べて、①100g当たり120mg以上少ないこと、②対象品と比べて同等レベル以上においしいこと、③外観が適切であることなど。
たとえば、飲食店の定食や弁当なら、一食当たり600kcal程度で塩分2.0 g未満。単品の総菜は、一品当たり塩分0.5g以下か、通常の商品より3割以上カットしたものとなる。
企業からの申請を受け、国立循環器病研究センターが味や栄養表示を調べ、審査で認定されると「かるしおマーク」を商品に表示できる。企業は「国循」お墨付きの減塩商品として、消費者に付加価値をアピールすることができるのだ。
実際の認開始定は2015年からになるが、減塩をビジネス化することによって、医療界が外食産業や食品業界と連携して健康増進への意識を高めようという取り組みである。どんな企業が申請するかは、フタを開けてみないとわからない。
しかし、減塩に取り組む商品がどれか一目で分かり、塩分の心配なしに外食ができるようになるのなら、消費者にとっては大歓迎だ。このプロジェクトが軌道に乗り、少しでも日本人の食生活の改善に役立つことを期待したい。
(文=編集部)