がんの場合は「がん情報サービス」で探そう
たとえば、大腸がん患者が腹腔鏡手術を希望する場合を考えてみよう。
ランキング本を見比べて、開腹手術と腹腔鏡手術の件数が別々に表示されていれば、重要な目安だ。腹腔鏡手術率は病院によってかなり異なる。大腸がん手術数上位の10病院だけを比べても、腹腔鏡手術率は98%(虎の門病院)から6%(恵佑会札幌病院)まで大きな開きがあるのだ。
腹腔鏡手術は患者の苦痛や負担が少ないが、開腹手術より格段に難しい。熟練した医師でないと容体を悪化させたり、患部を取り切れなかったりといった不具合が起きる。だから腹腔鏡手術が多いのは、新しい手法を取り入れる意欲があり、それに技術が伴い、患者本位の考え方をする病院といえよう。
だが、がんの状態によっては、腹腔鏡手術が適応せず、開腹手術のほうがよい場合がある。それを考慮せずに、腹腔鏡手術率を上げることだけに腐心したのでは、逆に医療事故を起こしかねない。現に最近も、腹腔鏡手術で患者を立て続けに死亡させた医師(群馬大学医学部付属病院)がニュースを賑わせたばかりだ。
そこで利用したいのが、国立がん研究センターのホームページ「がん情報サービス」だ。トップページから進んで、「病院を探す」>「がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院を探す」とたどっていくと、病院ごとにかなり詳細なデータが収められている。当該ページでがんの種類や都道府県を指定すると、条件に合う病院が表示される。
そこで病院ごとのページに飛び、次のようにクリックして詳細を開く。
「指定要件に関する情報1>Ⅶ患者数・診療件数の状況>(2)麻酔及び手術等の状況>大腸がんの手術件数」
大腸がんは「開腹手術」「腹腔鏡下手術」「内視鏡手術」ごとに手術件数が表示されている。このように文章で説明すると複雑そうだが、実際はそれほどでもない。ぜひ諦めずにトライしてほしい。
このページ・この項目は、実際に入院・手術が現実のことになったら、ぜひ見比べたい数字の宝庫である。「詳細を開く」「別紙PDFデータ」もすべて一度は開いてみて、自分に必要なデータがどこにあるか見当をつけておきたい。
二つ目以降の病院については、必要項目だけを開けばよい。
最後は病院自身のホームページを見よう
病院1件ごとにたくさんのデータがあるので、数多くの病院を比較しようとすると多少の手間はかかる。つまり本当に知りたいデータは、自分の手で一つ一つ探し当てるしかないのだ。
しかし、多くの病院をひとつずつ調べるのは大変なことだ。どの病院を調べるか、そこにたどり着くまでの大まかな絞り込みには、やはりランキング本が有効だ。
自分の手で調査を尽くし、2~3の病院まで候補が絞り込めたら、最後は病院自身のホームページを見よう。隅々まで探せば、数値データに表れない情報があるかもしれない。不明点は院内の「がん相談支援センター」へ電話して聞く。自分の命を託すことになるかもしれない病院だ。納得いくまで調べたい。自分で選び抜いた病院なら治療効果も上がり、もしトラブルがあっても負担感が減るなどの二次的効果も期待できる。
注意したいのは、ランキング本は公正なデータを掲載するだけでなく、病院の広告も多いことだ。広告であることを冒頭に明示すべきだが、記事と誤認しそうな広告もある。取り上げられているからいい病院かと思うと、実はいい広告主に過ぎないわけだ。そのへんにも留意して記事を読み解いてほしい。
(文=編集部)