毎日の運動が心筋梗塞のリスクを下げる
平成25年の厚生労働省の統計によると、わが国の死因別死亡数は心疾患が全体の15.5%で、ガンに続く第2位。その中でも急性心筋梗塞は約20%と高く、突然死の死因としてはかなりの割合を占めている。
心筋梗塞の主な原因は動脈硬化。その危険因子である高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病、運動不足、喫煙、ストレスは、複数揃えばそれぞれが軽度でも心筋梗塞を発症する割合が高くなることが知られている。高血圧や糖尿病は生活習慣病だから、心筋梗塞も生活習慣病であるといっていい。
では心筋梗塞にならないためには、どんな生活をすればいいのだろうか? この9月、スウェーデンの研究チームによる「心筋梗塞のリスクが最も低い男性のライフスタイル」がアメリカの医学誌で発表され、話題を呼んでいる。
●5項目で罹患リスクが86%減少
研究を手がけたのは、カロリンスカ医科大学のアグネータ・オーケソン教授らのチーム。彼らは45~79歳の健康なスウェーデン人男性20,721人を対象に、食事、運動、アルコール摂取、内臓脂肪、喫煙などの生活習慣について11年間調査を行った。11年の期間中に、1,361人が心筋梗塞を発症。「推奨する健康的な5つの生活習慣」を基準に分析すると、実行している項目が多いほど心筋梗塞のリスクは減少したという。たとえば食事と飲酒に関する項目のみを実行している場合でも、心筋梗塞のリスクが35%減少している。
さらに、5項目の生活習慣すべてを実行している男性では、ひとつも実行していない男性に比べて心筋梗塞発症リスクが86%も減少することが明らかになった。その「5つの生活習慣」とは以下の通りだ。
1.健康的な食事
野菜、果物、全粒粉、魚類、豆類、ナッツ類、低脂肪の乳製品などを毎日食べ、カロリーを摂りすぎない。
2.運動を毎日行う
ウォーキングなどの運動を1日に40分以上行い、週に1時間以上は筋力トレーニングを取り入れた運動を行う。
3.適度なアルコール摂取
アルコールは適度に摂り、飲み過ぎない。1日あたり10~30g程度(ビールなら大瓶1本まで)。
4.腹囲(へそ周り)のサイズを管理
腹囲周囲径を測り、内臓脂肪が増えないように管理。ウエストサイズは37インチ(93.98㎝)未満。
5.タバコを吸わない
喫煙習慣のある人はすぐに禁煙をする。
●少しの生活改善で遠ざけられる
「知っている。何を今さら」と感じる人も多いだろう。オーケソン教授も「生活習慣自体は驚くべきことではない」と認めているが、「驚くべきはこの項目だけで、これほど劇的なリスク低下があったこと」と指摘する。ちなみにこの調査で、5つの生活習慣をすべて実施していた男性は約1%。100人にひとりでしかなかったという。知ってはいても、実行するかどうかはまた別の問題だ。
心筋梗塞の予防に関する知見はほかにも数多ある。たとえば2006年の厚生労働省の発表によると、魚を食べる量が多いグループ(1日当たり180g相当)は、少ないグループ(1日当たり20g相当)と比べて、心筋梗塞を起こすリスクが約55%も低い。魚に含まれるオメガ3系脂肪酸のDHAとEPAの予防効果が特に有効だという。これも、身近な習慣が心筋梗塞のリスクを劇的に低下させる一例だろう。
「生活を見直し不健康な要因を見つけて、少しずつでも健康的なスタイルに変えていくことが大切」とオーケソン教授は強調する。完璧でなくても、できる範囲で生活を変えるだけで、重い病気を予防する効果は十分得られる。健康不安をかかえるアナタ! ゆっくり、少しずつ生活改善を始めてみてはいかがだろうか。
(文=編集部)