頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた

頭痛は大きく分けて1次性頭痛と2次性頭痛のふたつ、まずは頭痛のタイプを見分ける

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命に関わる病気が潜んでいることのある2次性頭痛

 頭痛には、何らかの原因が潜んでいる場合があります。ポイントとしては、「突発性の頭痛」、「経験したことのない頭痛」、「いつもと様子の違う頭痛」などの症状があれば、至急、医療機関での診断が必要です。例えばクモ膜下出血などの時には、急激な血圧の上昇を伴うことが多く、「何時何分から、突然に、非常に痛い頭痛が出現した。」というように表現する患者さんもいます。特に重篤で生命に関わる疾患もありますので、自分で判断せず、頭痛症状が改善しない、あるいは進行して悪化する場合は必ず医療機関を受診してください。

 2次性頭痛には重篤な疾患が隠されていますが、注意が必要なものは、クモ膜下出血などの脳血管障害(脳卒中)に関連する疾患です。2次性頭痛の分類で、⑤〜⑬の9つの種類の頭痛が2次性頭痛と呼ばれる範疇に入ります。簡単にこれらの頭痛について説明したいと思います。

⑤頭頸部外傷・傷害による頭痛
 文字どおり、何らかの外的圧力、力によって頭痛を引き起こされた頭痛です。外傷や脳手術後の合併症として見られることもあります。またむち打ち症のように頭痛だけでなく、めまい、疲労、集中力の低下などの他の症状を合併する場合もあります。

⑥頭頸部血管障害による頭痛

 この中には、脳梗塞、脳出血、一過性脳虚血発作(TIA)や脳動脈の異常によるものが含まれます。特に注意を要するものにクモ膜下出血や、椎骨脳底動脈乖離(のうていどうみゃく・かいり)など時に診断に苦慮する疾患も含まれるため、注意が必要です。呂律困難(しゃべりにくい症状)や片麻痺(左右どちらかのマヒ)があれば、脳梗塞や脳出血の可能性が高くなります。同時にこれらのタイプの頭痛は通常、高血圧を伴い、頭痛が改善することが少ないとされています。「突発性の頭痛」、「経験したことのない頭痛」、「いつもと様子の違う頭痛」であれば、くも膜下出血や椎骨脳底動脈乖離のように生命にかかわる疾患の場合もあり医療機関での検査・診断することが重要です。

⑦非血管性頭蓋内疾患による頭痛
 この範疇に入る疾患として、脳腫瘍による頭蓋内圧上昇、髄液への癌細胞浸潤などがあります。また逆に低髄液圧による頭痛も引き起こすこともわかっています。てんかん発作に伴う頭痛や脳内ホルモンに伴う頭痛も、この「非血管性頭蓋内疾患による頭痛」に分類します。
⑧物質またはその離脱による頭痛
 ここでの物質とは、主に薬物使用による頭痛を示します。硝酸イソソルビドなどのニトロ基を持つ硝酸系の心臓病に使用する薬品は、ニトログリセリンと構造が類似しているため、頭痛を引き起こすことが知られています。アルコールの飲酒によって頭痛が引き越されることは読者のみなさんにも経験のあることではないでしょうか。その他、食品添加物であるグルタミン酸ナトリウムも知られている頭痛誘発薬品です。自分でも知らない間に頭痛を誘発する物質(薬品・化粧品)を摂取していることもあるため、頻回の頭痛を引き起こす場合には、自分の生活スタイルや健康食品の中で原因となるようなものがないか、確認することも必要です。また医師から処方される薬剤でも頭痛を来すことがあるため、自分の内服している薬剤を知ることも重要です。
⑨感染症による頭痛
 全身の感染症に随伴して起こる頭痛は、この分類となります。具体的には、インフルエンザ、敗血症、細菌性髄膜炎・脳炎、ウィルス性髄膜炎・脳炎などが含まれます。
⑩ホメオスターシス障害による頭痛
 人は、体内の状態を一定にし、体内リズムを持って生活しています。これをホメオスターシスと言います。このホメオスターシスが乱れることにより頭痛を併発します。とくに、高い山に登った時(高山性頭痛)やプールや海で潜った時の気圧の変化などによる頭痛(潜水時頭痛)はよく経験します。他に睡眠時無呼吸症候群による低酸素状態、睡眠不足による頭痛、甲状腺機能低下による頭痛、高血圧そのものが頭痛を引き起こすこともあります。
⑪頭蓋骨,頸,眼,耳,鼻,副鼻腔,歯,口あるいはその他の顔面・頸 部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面痛
 分類のとおり、頭蓋骨,頸,眼,耳,鼻,副鼻腔,歯,口などの障害に起因する頭痛です。よく経験するのは、中耳炎や副鼻腔炎、眼の疾患である緑内障などがあります。これら以外にも頸部顔面の疾患に起因する頭痛も、ここに分類されます。
⑫精神疾患による頭痛
 頭痛症状、めまい症状が精神疾患に合併することはよく知られています。しかし安易に⑫と診断はするのではなく、⑤〜⑬に上げた他の疾患を十分鑑別、検査することが必要です。同時に精神疾患に起因する頭痛として診断したとしても、他の2次性頭痛を見落とすことはあってはなりません。いずれにしても十分な内科的、外科的診察、検査をおこなった上で、必要であれば精神科医師も受診してください。
⑬有痛性脳神経ニューロパチーおよび他の顔面痛
ここでは、顔面痛として分類されている三叉神経痛という病気が中心になり ます。中年以上の女性に多く、ちょっとした刺激で顔面や口の中に電撃痛が頻回に走る病気です。通常は、皮膚表面に起こる神経痛の一種です。痛みは数秒で消えますが、この痛みのために、歯を磨いたり、髭を剃ったりできなくなります。冷たい風に当たっても痛く感じることもあり、食べる時やしゃべる時も痛いので患者さんは大変困ります。痛みはいつも同じ片側に起こります。

 以上、日常的によく目にする頭痛といっても、その種類や原因となる疾患はさまざまです。1次性頭痛には、有効な治療薬や治療法が開発されています。また、今回紹介した原因のある頭痛(2次性頭痛)では、その原因を取り除く(治療する)ことがもっとも有効かつ重要な頭痛の治療です。今回は頭痛分類に焦点をあてて概説しました。頭痛症状が続く時は、かかりつけ医の適切な判断のもと、必要であれば頭痛専門医の医療機関を受診して相談してください。

連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」バックナンバー

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授、近畿大学医学部附属病院神経内科。1992年、近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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