自殺報道で確実に増える模倣自殺
理由としては、テレビや雑誌などのメディアによって自殺に関するニュースがセンセーショナルに取り上げられると、「群発自殺」といってそれがきっかけで自殺者が増えることが懸念されているためです。
研究報告によると、通常模倣自殺のピークは最初の3日以内で約2週間まではそれが続きます。また時に長く遷延することもあり、報道の量と、露出度が模倣自殺に密接に関連しています。
私たちは、日々の生活で自分たちで思っている以上にメディアの影響を受けています。例えば、芸能人などの自殺のニュースが繰り返し繰り返し報道された後には、自殺件数が増加することが海外をはじめ日本の研究でも証明されています。
警視庁によると今年の4月から6月の自殺者数は昨年より減少したものの、7月以降の自殺者数は4カ月連続して昨年よりも増えており、7月1840人(47人増加)、8月1889人( 286人増加)、9月1828人(166人増加)、10月は昨年に比べ614人も増加し昨年同月比で39.9%増となりました。
この例年にない自殺者の増減に対し「 いのち支える自殺対策推進センター」は自殺の動向に関する分析を取りまとめた緊急レポートを10月21日に発表し、今年の自殺の傾向について例年とは明らかに異なっているとした上で、様々な年代で女性の自殺が増加傾向にあること、特に7月18日以降は前年同期間との比較においても、前後一週間の比較においても、いずれも自殺者数が増えており、自殺報道の影響があったと考えられると発表しました。
自殺報道が新たな自殺を誘発する現象のことは、「ウェルテル効果」と呼ばれています。この言葉は 1774年にゲーテの 「若きウェルテルの悩み」 が出版された際、この本に影響を受けて同じ服装や方法での青少年の自殺が相次いだことに由来しています
一方で、今回の報道からは各放送局の戸惑いのようなものも感じられました。本来ニュースは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうした」を「正確に」「詳細に」「わかりやすく」視聴者に伝えることが求められていますが、上記のガイドラインに照らし合わせると、「ガイドラインに抵触するゆえ報道できない」情報が多々できてしまいます。
また、どこからがセンセーションな報道なのか、過度な繰り返しになるのか、美化に当たってしまうのか、写真や映像の使用など個別の具体的な線引きは主に各局の判断になると考えられます。今回のことで「自殺自体を報道しないほうがいいのでは」といった論調も出てきましたが、テレビ局自体も自殺をニュースとして取り上げること自体に困難さ感じたように思いました。
一方、SNSなどに流れる視聴者の声からは、当初のガイドライン違反が批判された一方で、歯切れの悪いマスコミの報道に対する不信感も見受けられました。
自殺報道のあり方については、これまでも命の電話関係者、弁護士、精神科医などが一緒になって自殺予防のためのシンポジウムなどが開催されてきましたが、改めてマスコミの関係者や専門家や一般市民も含めて、自殺報道について今一度考え直し、相互に理解を深めることが今後の報道のあり方を模索し互いの理解をすすめる上で重要なのではないでしょうか。