『新型コロナに対する幹細胞治療が注目』後編  スタークリニック院長竹島昌栄医師

幹細胞治療でCOVID-19の重症化抑制と予防の可能性

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血栓症による重症化症例が意味するものとは?

 COVID-19の病態が次第に解明されるにつれ重症化の原因として注目されているものに血栓症がある。血栓症は、なんらかの原因で血管の中に血のかたまり(血栓)ができ、血管がつまってしまう病気だ。動脈でできる動脈血栓症と静脈でできる静脈血栓症に分けられ、その血栓が血管内を移動し引き起こされるのが動脈では主に心筋梗塞、脳梗塞、静脈では肺塞栓、最近ではエコノミー症候群も知られている。それではなぜ血栓が起きるのか?

「一般的には血管内皮を損傷する要因は、動脈硬化や中性脂肪などですから圧倒的に動脈血栓症のほうが多いのですが、COVID-19は急激に血管内皮を損傷するため、内皮が薄い静脈で比較的多く発生しているようです。血管内皮をウイルスが傷つけるとその部分を修復しようと主に血小板が集まってきます。血栓のほとんどはこの血小板の塊です」(竹島先生)

 さらに続けて「今回のCOVID-19でもこうした血栓による重症化や死亡例が見られます。血栓症で重症化する流れとして、COVID-19のような感染症では、全身に感染が広がり血管内に無数の血栓がばらまかれた、DIC(播種性血管内凝固症候群)という状態があります。体内のいたるところで細い血管が詰まり、酸素や栄養などが組織に届かなくなり、腎臓や肺などの多数の臓器が障害を起こし、生命に重大な危機をもたらします」という。

 この事態が悪化すると血栓の元になる血小板や凝固因子が体内で大量に消費されるため、それらが量的に著しく減少して、非常に出血しやすくなりさらに致命的な状況に陥る。

「COVID-19のこうした重症化症例を見ていくと、その多くは血管を損傷することで様々な問題が引き起こされる病態が存在しているのではないかと考えられます。だからこそ幹細胞治療の可能性が見えてくるのです」と竹島先生。

炎症性疾患、自己免疫疾患などへの応用までみえる幹細胞治療

 間葉系幹細胞(MSC)は、脂肪組織、骨髄、胎盤、臍帯など、体のさまざまな場所に見られる体性幹細胞。比較的容易に採取、分離、培養が可能で、これまでも基礎研究から臨床試験まで多くの分野で活用が進んできた。今回のCOVID-19に対してはどのような機序で症状が改善したのだろうか。

「MSCの抗炎症効果や細胞増殖因子誘発作用は長い間知られており、同時に強力な免疫調整機能もあると言われています。COVID-19で乱れた免疫系の機能を正常化、さらに幹細胞は血管内皮の接着因子を強くするため、血管自体を強くするというのは研究から明らかになっています。こうした働きがCOVID-19の症状改善にまさにうってつけだったと予想されます」(竹島先生)

 最近話題になっているCOVID-19の後遺症に関してどうか?

「回復したのちでも、肺炎の症状が長期間継続したり、急性腎不全の発症、初期症状として知られる味覚や嗅覚の障害残存などが報告されています。これは血管の損傷が完全に回復しきらず、サイトカインストームの余波で体のあちこちに炎症が残っていたり繰り返したりしてしまうだと思います。こうした後遺症の回復のためにも、幹細胞を補うことで症状の改善が期待できるのではないかと考えます」

 今後の展望については、「私のクリニックではアスリートの方などを対象に膝関節などの傷んだ部位に幹細胞を注射し局部的な治療を行って効果を上げていますが、MSCの抗炎症効果や細胞増殖作用、免疫調整機能を考えるとCOVID-19に対する治療効果だけではなく、様々な炎症性疾患や自己免疫疾患などへの応用まで見えてくる。また、抗炎症効果、細胞増殖作用、免疫調整機能作用などの効果を持つ幹細胞は、感染の予防策(予防治療)としても最も有望な治療のひとつだと思います。」とのこと。

 しかし、自己の幹細胞を培養し静脈から体内に入れる治療方法は日本ではまだほとんど保険適用になっていない。さらなる研究と臨床データの積み上げに期待したい。
(文=編集部)

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竹島昌栄(たけしま・しょうえい)
(医)スターセルアライアンス スタークリニック院長
東京医科大学卒業、慶応義塾大学病院整形外科教室入局、国立東京医療センター整形外科 医員、慶応義塾大学整形外科医員、北里研究所病院整形外科医長、太田記念病院整形外科部長、永寿総合病院整形外科部長。
再生医療/整形外科/四肢スポーツ再建外科を専門とする。
日本整形外科専門医/運動器リハビリテーション医/日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医/臨床研修指導医/日本体育協会認定スポーツ医 

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