感染妊婦の行き場がない! 医療者の大規模な抗体検査と施設の棲み分けを

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何のための緊急事態宣言か! 早急な周産期医療提供体制の再編を

 この問題の解決のためには、院内感染防止策は当然ながら、医療者の大規模な抗体検査と施設の棲み分けが必要だ。

 抗体検査は簡便に行え、COVID-19への耐性をみることができる。もちろん抗体があるからと言って必ず感染が防げるかどうかはわからず、診断キットの信頼性など問題はあるが、一つの目安になる。

 大規模な抗体検査を行い、現在の感染が心配ならさらにPCRでも行うことで、既にCOVID-19に免疫を持つ医師を複数のチームに分散させることができる。また、COVID-19妊婦を重点的にみる施設と、通常の分娩を多く扱う施設を設けそれぞれを集約化することも重要だ。当然、COVID-19妊婦をみる施設には金銭面や精神面での多大なサポートが必要であるし、通常の分娩を集約化する施設では、COVID-19のために活動できていない開業医を臨時で雇用するなどの仕組みを作り人手を確保するなどの工夫が必要になる。

 あの妊婦さんは一体どこに受け入れられたのだろう…。そう考えるたび心に陰が差す。家族から感染者が出て、妊娠中の不安が多い時期を一人で過ごすことがいかに精神を蝕むか。あげく自分に症状が出ようものならば救急車を呼びたくなるのは無理もない。既に感染対策から分娩時の立ち合いや入院時の付き添いを控えてもらっているが、それだけでも多くの妊婦が精神的に不安定となっているのを現場は強く感じている。

 感染妊婦だけでなく、全ての妊婦は今、自分が感染したらどうなるのかを不安に感じている。早急に周産期医療提供体制の再編が必要だ。何のための緊急事態宣言か、病院の枠を越えた連携を取るための施策をすぐにでも検討すべきではないだろうか。
(文=前田裕斗)

前田裕斗(まえだ・ゆうと)
国立成育医療研究センター産科医
東京大学医学部医学科卒業。
川崎市立川崎病院、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科などをへて
2018年より国立成育医療研究センター産科フェロー。
日本産婦人科学会認定、産婦人科専門医

※医療バナンス学会発行「MRIC」2020年4月13 日より転載(http://medg.jp/mt/)

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