難治性のむちうち症を改善 後編 東京脳神経センター 整形外科・脊椎外科部長 川口浩医師

難治性むちうち症からなぜ多くの不定愁訴がおきてしまうのか?

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首のコリが副交感神経に及ぼす影響は?

 川口医師は、今回の論文の意義を次ぎように説明する。
「私たちの論文は、松井先生が発見した頚部筋群の緊張や攣縮が全身の不定愁訴に関与していることを示した世界初の知見になります。頚部筋群の間には副交感神経が通り、さらに全身に広がっています」

 副交感神経は、交感神経とともに、自律神経系と呼ばれる。自律神経は自分の意識でコントロールするのが難しい神経系である。

「手を動かそう」と意識して手を動かしたり、自分で意識しコントロールできる働きは、脳・脊髄神経系がつかさどっていが、一方、呼吸や発汗は、自分で「息を吸って吐こう!」「汗をかこう」と意識しなくても自立的に機能する。この働きは、自律神経系がつかさどっているからだ。自律神経系は、内臓・血管などの働きをコントロールし、われわれの体内の環境を整えている。

 自律神経には、起きているとき、緊張しているときに優位となる交感神経と、寝ているときやリラックスしているときに優位となる副交感神経がある。

 たとえば、朝起きると、交感神経が働き目の瞳孔が大きくなり、心臓も動きが活発になる。反対に、睡眠中は副交感神経が働き、瞳孔は小さくなり心臓の動きはゆっくりとなり、胃の動きは活発になる。この二つの自律神経の乱れが多くの不定愁訴と深い関係がある可能性が高い。

「治るのならば」と長期入院も厭わない患者さん

「難治性むちうち症の全身症状と副交感神経との関係が解明できれば、治療法を開発する突破口になります。また、むちうち症でなくても、頸部筋群に関係する不定愁訴を訴える患者さんが多くいます。むちうち症と副交感神経のメカニズムがわかれば、そういった患者さんを治療する道も開けるでしょう」(川口医師)

 難治性むちうち症の患者は、耐え難い全身症状に悩みながら、いくつもの病院をまわり、それでもよくならない場合が多い。

「当病院に来院される患者さんに、『長くなりますが1~2カ月入院できますか?』 と尋ねると、治るのであればぜひと入院を希望される方が多くおられます。それだけ、苦しんでおられるのです」

 東京脳神経センターと連携する松井病院では、原因不明の難治性むちうち症の患者を受け入れ、回復・改善させ、治験を深めてきた。今回の論文発表を突破口とし、画像診断できない困難な症状にどう挑み、症状発生のメカニズムを解明し治療につなげていくのか、 注目したいところだ。
(取材/文=増澤曜子)

川口 浩(かわぐち・ひろし)
東京脳神経センター 整形外科・脊椎外科部長

脊椎外科医、基礎・臨床の骨研究のトップランナー。コネチカット大学内分泌科のLawrence Raisz教授の下に留学し、帰国後は臨床教室における先端研究システム運営のノウハウをいかし東京大学で骨・軟骨の先端研究と研究者の育成を行なう。
現在、臨床の現場から問題提起して研究を行い、その結果を臨床に還元する姿勢を堅持して、世界をリードする国際的医学研究を続けている。

東京大学 医学部卒業/医学博士(1985)
米国 コネチカット大学 フェロー(1991-1994)
東京大学 医学部 整形外科・准教授(2004-2013)
JCHO東京新宿メディカルセンター 脊椎脊髄センター・センター長(2014-2018)
2018年より現職。

Osteoarthritis and Cartilage 編集委員(2008-)
BMC Musculoskeletal Disorders 編集委員(2010-)
米国整形外科学会(AAOS) 最高賞Kappa Delta賞 受賞(2009)
米国骨代謝学会(ASBMR) Lawrence Raisz賞 受賞(2011)
Publications(peer-reviewed) > 300: Impact factor > 1,600

難治性むちうち症からなぜ多くの不定愁訴がおきてしまうのか?
難治性のむちうち症を改善 後編 東京脳神経センター 整形外科・脊椎外科部長 川口浩医師

前編『画像診断できない難治性のむちうち症を独自の治療法で改善』

原因不明で治療法がなく多くの患者さんが回復をあきらめていた難治性のむちうち症。東京脳神経センターで進む独自の治療で、めまい、動機、吐き気などの全身症状やうつ症状などの不定愁訴が大幅に改善しているという。その具体的な成果についてお話を伺った。

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