「ノロウイルス」なぜ冬に流行? 牡蠣やホタテの刺身には要注意

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ノロウイルスによる食中毒患者は年間8,496人

 厚生労働省の「平成29年の食中毒発生状況」によると、ノロウイルスによる食中毒は、全食中毒数1,014件のうち214件(21.1%)、全患者数16,464名のうち8,496名(51,6%)を占める。

 ノロウイルスによる急性胃腸炎に伴う主症状は嘔気・嘔吐、下痢、腹痛だ。ウイルスが体内に入って半日から2日の潜伏期間を経て、嘔吐や水様性下痢が始まり、2日ほどで回復に向かう。感染性胃腸炎の代表的原因ウイルスのロタウイルスと比べると、吐き気の症状が強いが、下痢症状は数日で治まることが多い。

 ただ、症状が改善しても、2~3週間は糞便にウイルスが排泄されるので、感染拡大を予防するために排泄物の処理には注意が必要だ。小児や高齢者は脱水症状のほか、痙攣、腸重積、脳症などの合併症を伴う場合もあるため、注意したい。

 ノロウイルスの急性胃腸炎の診断は、臨床経過や身体診察が中心だ。糞便を用いた検査方法に遺伝子診断法(リアルタイムPCR法、LAMP法など)や、15分程度で結果が判明するイムノクロマトグラフ法がある。脱水が進行すると腎機能障害、電解質異常、アシドーシスを伴うため、血液検査や尿検査が行われ、痙攣や脳症が疑われる場合は脳MRIなどの画像検査、脳波、髄液検査などの検査が必須だ。

 現在、ノロウイルスに有効な抗ウイルス剤はなく、治療は対症療法しかない。特に体力の弱い乳幼児や高齢者は脱水症状や体力消耗を防ぐために、水分と栄養の補給を充分に行う必要があり、脱水症状がひどい場合は病院で輸液を受けなければならない。また、下痢止め薬は回復を遅らせる恐れがあるため、服用は勧められない。

 その他、乳糖不耐症と呼ばれる症状が出現することもある。乳糖不耐症になると、母乳やミルクを消化できなくなり、下痢を生じる。ノロウイルス胃腸炎に伴う一過性の反応なので、一時的に母乳・ミルクを中止したり、消化しやすい粉ミルクの使用、内服薬を併用したりすれば改善する。また、環境中のウイルスを完全に排除するためには、次亜塩素酸ナトリウムの使用が必要になる。

ノロウイルス食中毒の予防方法とは

 ノロウイルス食中毒の予防方法は以下のとおりだ。

・食事の前やトイレの後は必ず手を洗い、常に爪を短く切り、石けんを十分泡立ながら手指を洗浄する(指輪は外す)
・下痢や嘔吐の症状がある人は食品を取り扱ったり調理作業をせず、調理器具は使用後に85度以上の熱湯で洗浄する
・胃腸炎患者に接する人は、患者の糞便や嘔吐物を衛生的に処理するなどの注意が大切

 ウイルスは熱に弱く、加熱処理はウイルスの活性を失わせるので、特に抵抗力の弱い幼児や高齢者はしっかり加熱した食事を摂るように心がけたい。

 国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が設立した、食品の国際基準を作る国際機関コーデックス委員会が2012年に定めた「食品中のウイルスの制御のための食品衛生一般原則の適用に関するガイドラインによると、ノロウイルスの感染の恐れがある二枚貝(牡蠣やホタテ貝)は中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱が重要としている。この季節、アツアツの鍋料理に牡蠣やホタテ貝は欠かせない。生食だけは避けるのが賢明だろう。

 保育園、学校、高齢者の施設などで感染が疑われた場合は、最寄りの保健所やかかりつけの医師に相談してほしい。
(文=編集部)

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