日本人が保有するピロリ菌は発がん性が高い
胃がんの発症には、「ピロリ菌」の感染が大きく関与している。WHO(世界保健機関)は、世界の胃がん患者の80%でピロリ菌が陽性だと推計している。日本人に限っていえば、胃がん患者のほぼ99%がピロリ菌陽性とされる。
実は日本人は、先進国の中ではピロリ菌の保有率が高い。ピロリ菌の主な感染ルートは「水」とされ、上下水道の整備が行き届いていなかった時代の感染が多かった。
50代以上の日本人の感染率は約50%。水道が整った40代より若い世代では感染率は低くなり、20代では10%、10代では2%まで低下している。
もう一つ、我々がピロリ菌に気をつけるべき理由がある。同じピロリ菌でも、欧米人と比べ日本人の保有するピロリ菌は、発がん性が高いことがわかってきた。
ピロリ菌は胃粘膜にすみつく病原細菌で、胃潰瘍や萎縮性胃炎を引き起こす。加えて、近年の研究から、ピロリ菌が作り出す「CagA」と呼ばれるタンパク質が胃細胞に侵入し、「SHP2」という酵素と結びついて、この酵素が異常に活性化し、細胞のがん化を促進することが判明した。
そして、日本人の胃にいるピロリ菌は、欧米型ピロリ菌と比べて、タンパク質CagAが酵素SHP2と結びつきやすい構造をしていることが判明している。
だからこそ、日本人はピロリ菌を除菌し、胃がん発症のリスクを低下させるべきだと、専門家は口を揃えて言う。ピロリ菌の除去によって、胃がんの発症リスクは3分の1から3分の2程度に減らせると言われている。
ピロリ菌検査は10代から受けるべき
胃がん検診は現在50歳以上に推奨されているが、ピロリ菌に感染しているかどうかの検査は10代から行ったほうがよいという考え方も出てきている。
実際に、佐賀県は全国に先駆けて、2016年から中学3年生を対象にしたピロリ菌感染の検査を実施した。その結果、検査を受けた6953人中、約3.5%にあたる247人が陽性だったことが判明した。陽性が判明した生徒の多くは、除菌治療を受けたという。
今後、こうした取り組みが広がることによって、若くして胃がんで亡くなるという悲劇がなくなることを期待したい。
(文=編集部)