シリーズ「AIと医療イノベーション」第25回

AI小説がベストセラーになる日は来る?AIが書いた小説が星新一賞の審査を通過

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欠点は、ストーリーを書けない、表現力が乏しい……

 小説家の最初の仕事、それはストーリーを発想しプロットを固めることだ。

 だが、AIは母国語を持たないため、人間がインプットしたプログラム言語の指示通り動くだけなので、自分でストーリーを組み立てられない。AIは記号認識するため、長い文章を書くと表現力が乏しく、不自然な文体になる。平板なあらすじの羅列になり、エピソードに膨らみが浅く、読み応えがしない。

 また、感情を持たないので、面白さを理解したり、作風の良し悪しを判断できない。人間と同じように胸ときめかしながら小説を書くことはない。そして、日本語ならではの言葉の裏の真意、尊敬語や謙譲語の風合い、スラングの諧謔、経験知や暗黙知、以心伝心、言わずもがなの境地を知らない。美的感覚、作者の本音、批評的な精神や論理、ジョークやアイロニー、男女の情愛、子供の素朴さ、人生の機微、喜怒哀楽の微妙なニュアンスを理解できない。

 その帰結として、文脈や言葉からイメージやストーリーを人間のように組み立られないので、文章が連なれば連なるほど別人が書いたようによそよそしい文章が続き、冷めたく、乾いた文体になりやすい。たとえば、星新一の次に村上春樹、村上春樹の次に小松左京という風に「のっぺりした没個性の異邦人まがい」の文体が延々と連なりかねない。

 AIはこのような作業の限界と作風の欠点をまだ超えられない。小説は人生経験や自由なイマジネーションから発想する人間臭い営みである限り当然だろう。

人間が想像もしない驚天動地の新境地を切り拓く?

 しかし希望はある。ディープラーニングのニューラルネットワークから生まれる創発力(emergence)への道。つまり、人知が決して及ばない予知・予測・類推能力のポテンシャリティだ。創発力が荒唐無稽、天真爛漫、天衣無縫のインスピレーションに目覚め、超ジーニアスなブレークスルーを引き起こす可能性が高い。

 AIは人間が感情的に恐れたり、理性的に拒んだりたりする局面を回避しないので、人間が想像すらしない発想をする強烈かつ柔剛なアドバンテージ(優位性)がある。したがって、AIが人間に書けない新宇宙を産み落とす潜在エナジーは推し量れない。

 たとえば、古今東西の名作や傑作を全て学習・分析できれば、「漱石風」「トルストイ風」「春樹風」のような思わぬ感動大作や青春純文学が出来(しゅったい)するかもしれない。

 また、ユーザーの嗜好に合わせた連続小説を毎日スマホに送る携帯小説などのコンテンツビジネスもありうる。短いキャッチコピーを作るコピーライターになる道もある。映画、ドラマ、舞台のシナリオライターも有望だろう。

AI小説がベストセラーになる日は来るだろうか?

 さて、AI小説がベストセラーになる日は来るだろうか? 21世紀のAI文豪はデビューするだろうか? 芥川賞や直木賞、アカデミー賞やトニー賞を脅かすチャンスはあるだろうか?

 AIは、知的ツールに過ぎないので、人間がプログラムを作らなければ1秒も1ビットも動かない。したがって、人間とAIのコラボレーションを深めつつ、パートナーシップを構築しなければ、共存できない。

 そのミッションは、ただ一つ。AIは人間に寄り添いながら、人間の未来を幸福にする役割がある。面白い小説を書けるかどうかは、赤い血の通った人間の手にかかっている。

 AIがクリエイティブの世界を一変する日が来ても驚かない。そんなスマート(賢明)な人間でありたい。ホモ・サピエンスのプライドだけは不滅だから。
(文=佐藤博)

参考
インターアカデミー「AIが小説家になるかも!?進化し続けるAIと今後の予想」2018/02/19
佐藤理史『コンピュータが小説を書く日――AI作家に「賞」は取れるか』(日本経済新聞出版社)


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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