高畑勲の代表作『火垂るの墓』(画像はDVDのパッケージより)
4月5日、アニメーション映画監督の高畑勲さんが都内の病院で死去した(享年82)。訃報を受けて『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)は、4月13日の放送内容を急遽変更し、追悼番組として故人の監督・脚本による『火垂るの墓』を流す決定を下した。
1970年代のテレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』(1973年)で幅広い世代に知られる高畑監督は、寡作ながらアニメ映画では『おもひでぽろぽろ』(1991年)、『ホーホケキョとなりの山田くん』(1999年)、『かぐや姫の物語』(2013年)などを遺した。
なかでも『火垂るの墓』(1988年)は、毎年、終戦記念日が近づけばテレビ放送されてきた故人の代名詞的な作品だ。
『火垂るの墓』今だに褪せない衝撃度
野坂昭如氏の原作小説をアニメ映画化した同作は、第二次戦時下から敗戦直後の混乱する神戸市と西宮市の近郊が舞台だ。空襲が原因で母を亡くした兄(14歳)と妹(4歳)が、賢明に生き抜こうとする姿と、それぞれに襲いかかる悲惨な最期を描く不朽の名作だ。
また、その朽ちない衝撃度と評判については、同作が追悼プログラムに選ばれたと報じられた直後からネット上で交わされた数々の「異論」それ自体が、見事に物語っていた。
投稿陣曰く「追悼には暗すぎないか!?」「新年度の真っ最中に、わざわざ気持ちを落とす必要はないと思う」、あるいは「監督亡くなったってだけでショックあるのに……」などなど。
暗い、落ち込む、ショックだ――。鑑賞後、否応なく各人のこうした印象評を引きずりだす同作は、冒頭から餓死寸前の浮浪児らが描かれ、爆撃地には黒焦げ遺体が転がり、瀕死の母は全身包帯状態と、アニメながらも子どもの眼には酷過ぎる描写シーンも少なくない。
とりわけ、天涯孤独な兄妹を非情にも見舞う、清太と節子の永訣シーンは、「トラウマになる(なった)」「とても二度は観られない」「子どもには残酷」などの感想を口にする鑑賞者も少なくない。
なかには、そんな感想ばかりを耳にしすぎたあまり、「いまだに観る機会を逸している」という方もおられるだろう。母の形見も売り果たし、農作物の窃盗も見つかり、全身痛めつけられても、命がけで食べ物の調達に翻弄する清太――。
2人のアジトにようやく駆け戻った兄の眼に飛び込んできた光景は、待ちわびて衰弱しきり、寝たきり状態のまま、兄に小石を差し出すほどの幻覚さえ見ているかのような、節子の変わり果てた姿だった……。
この永訣の場面から、節子の死因を、いわゆる栄養失調(Malnutrition)と捉える方が大勢だろうし、2人の切羽詰まった生活環境ぶり――母も亡くした戦時・終戦下、一時身を寄せた親戚筋からも家出し、当然収入もない浮浪兄妹――から、そこに戦争の悲惨さを重ねる向きが大半だろう。