俳優ロビン・ウィリアムズの自殺に後追いの連鎖~SNS時代の自殺報道のあり方

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SNS時代の自殺報道のあり方

 その理由としてFink氏らは、ロック界のカリスマ(カート・コバーン)が自ら命を絶った「1994年」と、アカデミー助演男優賞の名優(ロビン・ウィリアムス)が縊死した「2014年」という間に起きた「報道の変化」を挙げる。

 つまり、カート・コバーンの自殺報当時はまだ、ロビン・ウィリアムスのようなセンセーショナルな報じ方もされず、何よりもソーシャルメディアの存在と普及率が比べものにならぬほど未熟な情勢だった――。

 ただし、こうした「著名人の自殺と報道の影響力」に関する研究(観点)自体は、ことさら新しいわけでもない。そうした事象を称して、社会学者のPhilipsが1974年に名付けた「ウェルテル効果」という用語もあるくらいだ。

 これはゲーテの『若きウェルテルの悩み』の主人公を語源とするが、1774年の小説に起因した当時のコピーキャット(模倣者)たちは、虚構死を後追いして自殺したという次第だ。
 
 日本でも同様の「後追い自殺」が起きたことがある――。

 古くは1700年代、劇作家・近松門左衛門の世話物(『曽根崎心中』『冥途の飛脚』『心中天網島』等)に触発された心中が流行り、幕府が心中物の上演を禁止。

 また、明治時代の一高生・藤村操の「人生は不可解である」との遺書に影響された後追いや、アイドル歌手・岡田有希子さんやロックバンドX JAPANのHIDEさんの自殺報に影響された悲劇例は、折々の時代で刻まれてきた。

WHOが<自殺を防ぐ報道のあり方>を勧告

 加えて、SNS全盛の現代は、著名人の自殺については、伝達速度も真偽不明の情報量も、それが悪影響を及ぼすという観点から見れば看過できない問題だろう。

 それは世界保健機関(WHO)が2000年に『自殺を予防する自殺報事例報道のあり方』という勧告を公表し、2008年に更新版を出した深刻さからも窺える。

 同勧告には、次のような注意喚起が謳われている。

 「具体的で詳細な自殺手段を報告しない」「単純化した理由付けをしない」「既遂した自殺や自殺の試みの方法について詳細な説明をしない」「有名人の自殺を報道する際には特に気を配る」「メディア関係者自身も自殺に関する話題に影響影響されるということを認識する」など。

 だが、今回の報告は、残念ながらWHO勧告の踏襲がいまだ守られずに未熟である点を明かしてはいないだろうか。

 一方、警視庁の統計によれば、昨年(2017年)1年間の国内自殺者は速報値2万1140人で「8年連続で減少」だとか。しかし昨年の場合、年齢別で「未成年者の自殺」は、唯一の増加傾向にあるという。

 未成年者の自殺を減らすためには、若者たちのアイデンティティを揺さぶるような事案が発生したり、そんな情勢下で昨今の不倫砲的な過剰報道や無責任な流言飛語が飛び交わないことを祈るばかりである。
(文=編集部)

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