流行は狭い地域だけ~日本では未確認
とはいえ、イヌは基本的にヒトに飼われており、自分の意志で広範囲に移動はしない動物だ。よってイヌからイヌへの感染も、アメリカ国内では一部の地域に限られ、大きく拡大する可能性は低いという。
そして幸いなことに、日本では今のところ、イヌのインフルエンザの感染例は確認されていないから、イヌのオーナーもむやみに怖がる必要はないだろう。
イヌ用のインフルエンザワクチンは、2006年にH3N8型、2015年にH3N2型を予防するものがアメリカで実用化されている。以降アメリカでは、地域によりイヌが多く集まる施設で過ごす機会のある場合には、予防接種を受けることが推奨されている。
Topper氏は「イヌのインフルエンザについて認識しておく必要はあるが、パニックになることはない。何か気になることがあったり、周囲で感染したイヌがいることを耳にしたりした場合には、自分のイヌの安全を確保するための対策についてかかりつけの獣医に相談してほしい」と話している。
「イヌからヒトへの感染リスク」はゼロではない
ここで愛犬家が最も気になるのは「イヌからヒトへの感染リスク」だが、米疾病対策センター(CDC)は「イヌからヒトに感染した例はこれまで報告されていない」としている。
逆に「ヒトのインフルエンザがイヌに感染した」という報告事例も現在までない。イヌのインフルエンザウイルスと、ヒトのものとは、型が異なるからだ。もし飼い主がインフルエンザに罹っても、ペットにうつす心配はない。安静は必要だが、愛犬には普段通りに接しても構わないだろう。
ただし危険が少ないといっても、ワクチンの改良などによる予防策を進めておくことは有効だ。複数のウイルス型に感染したイヌからヒトにも感染する、「進化型のウイルス」が誕生する恐れは理論的には起こりうる。
今のところ日本でイヌインフルエンザは確認されていないが、いつどんな形で浸入してくるかは分からない。もし国内に持ち込まれても、正しく対処すれば、流行を防ぐことは可能だ。そのためにもイヌと暮らしている人は、今から正しい知識を仕入れておきしたい。
(文=編集部)