DHAで赤ちゃんの頭が良くなる?研究結果は賛否両論

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魚を食べるお母さんの母乳はDHA濃度が高い

 それでは、母乳やミルク中のDHA量はどうでしょうか? 現在、販売されている主な育児用ミルクには、DHAが含まれているようです。

 母乳に含まれる脂肪酸の組成は、実はお母さんの食事内容によって変わることがわかっています(註5)。DHAをたくさん摂ると、母乳の脂肪分の量はあまり変わらない一方で、母乳の中の脂肪酸に占めるDHAの割合が増加するようなのです。

 魚を食べるお母さんの母乳は、DHA濃度が高いという研究も複数あります。例えば、ナイジェリアと日本の研究者が行った研究では、ナイジェリア人20人と日本人53人の母乳を調べたところ、脂肪酸全体の中のDHAの割合はそれぞれ0.34%と0.53%で、日本人のほうが高いことがわかりました(註6)。

 また、アイスランドでは暗い冬の間にビタミンDを補給するため、肝油を飲む習慣があるそうです。そこで77人のお母さんの母乳を調べたところ、肝油を日常的に飲んでいるお母さんと、そうでないお母さんの母乳中のDHAは、それぞれ0.54%と0.30%で、肝油を飲んでいるお母さんのほうが高いことがわかりました(註7)。

 さらに、母乳中のDHAに関する106の論文をまとめて解析した研究(註8)では、母乳中のDHAが多いのは、カナダ北極圏、日本、ドミニカ共和国、フィリピン、コンゴでした。お母さんたちがどのくらいの魚を摂取していたかについてのデータはありませんが、コンゴ以外はすべて海に囲まれ、よく魚を食べる地域です。ただし、コンゴにはコンゴ川が流れていて、淡水魚をよく食べるようです。

 一方でDHAが少ないのは、パキスタン、南アフリカの都会から離れた地域、カナダ、オランダ、フランスでした。これらは比較的内陸の国が多く、あまり海産物を食べないことが影響している可能性があります。

妊婦はもちろん母乳で赤ちゃんを育てているお母さんがDHAを摂取することは大切

 DHAサプリメントも母乳中のDHA濃度を上げる効果があるようです。

 1996年に発表された研究では、お母さんに産後5日目からDHA入りのカプセルを飲んでもらったところ、産後3か月時の母乳中のDHA濃度が上昇していたことがわかりました。DHAの濃度は、飲んでいたDHAの量が多いほど高くなっていました(註9)。

 妊娠中はもちろん、母乳で赤ちゃんを育てているお母さんも、しっかりDHAを摂取することは大切ですね。次回の記事では、どのようにDHAを摂取したらよいのかについて解説します。
(文=森田麻里子)


森田麻里子(もりた・まりこ)
南相馬市立総合病院麻酔科医師。2012年、東京大学医学部卒業。2012年、亀田総合病院での初期研修を経て、2014年、仙台厚生病院麻酔科、2016年より南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。


註1)Innis SM. Impact of maternal diet on human milk composition and neurological development of infants. Am J Clin Nutr. 2014;99(3):734S-41S.
註2)Innis SM. Dietary (n-3) fatty acids and brain development. J Nutr. 2007;137(4):855-9.
註3)Kuipers RS, Luxwolda MF, Offringa PJ, Boersma ER, Dijck-Brouwer DA, Muskiet FA. Fetal intrauterine whole body linoleic, arachidonic and docosahexaenoic acid contents and accretion rates. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2012;86(1-2):13-20.
註4)Hibbeln JR, Davis JM, Steer C, Emmett P, Rogers I, Williams C, et al. Maternal seafood consumption in pregnancy and neurodevelopmental outcomes in childhood (ALSPAC study): an observational cohort study. Lancet. 2007;369(9561):578-85.
註5)Francois CA, Connor SL, Wander RC, Connor WE. Acute effects of dietary fatty acids on the fatty acids of human milk. Am J Clin Nutr. 1998;67(2):301-8.
註6)Ogunleye A, Fakoya AT, Niizeki S, Tojo H, Sasajima I, Kobayashi M, et al. Fatty acid composition of breast milk from Nigerian and Japanese women. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1991;37(4):435-42.
註7)Olafsdottir AS, Thorsdottir I, Wagner KH, Elmadfa I. Polyunsaturated fatty acids in the diet and breast milk of lactating icelandic women with traditional fish and cod liver oil consumption. Ann Nutr Metab. 2006;50(3):270-6.
註8)Brenna JT, Varamini B, Jensen RG, Diersen-Schade DA, Boettcher JA, Arterburn LM. Docosahexaenoic and arachidonic acid concentrations in human breast milk worldwide. Am J Clin Nutr. 2007;85(6):1457-64.
註9)Makrides M, Neumann MA, Gibson RA. Effect of maternal docosahexaenoic acid (DHA) supplementation on breast milk composition. Eur J Clin Nutr. 1996;50(6):352-7.

医療ガバナンス学会発行「MRIC」2018年1月4日より転載

睡眠障害治療の新たな幕開け!個人に必要な睡眠の「量」と「質」を決める遺伝子を探せ
インタビュー「睡眠障害治療の最前線」後編:筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構・佐藤誠教授

前編『『人間の「脳」は7時間程度の睡眠が必要! 本当のショートスリーパーは100人に1人程度!?』』

ひとくちに睡眠障害といっても、さまざまな症状がある。1990年代後半から脳内に眠気を誘う「睡眠物質」を探す研究にスポットライトが当たり、2018年からは睡眠の質と量を決める遺伝子の解析も進められている。今回は睡眠障害について、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の佐藤誠教授に話しを聞いた。

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