近藤誠氏「ワクチン副作用の恐怖」は真に妥当性のある意見なのか?~批評(3)

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妊婦が麻疹になると大変!

 私はこれまで10代妊婦の風疹とか、妊娠早期の麻疹といった悲しいケースを経験してきました。いずれも予防接種を受け損なった方々です。制度から取りこぼれてしまう人は、かならずいるのです。

 風疹になった妊婦さんは中絶するかどうかで悩みます。CRS(編集部注:先天性風疹症候群)の危険のため、不安におののく毎日です。ワクチンの恩恵を受けていれば、経験しなくて住んだ苦しみです。

 妊婦が麻疹になると大変で、私達が経験した事例では、感染のために陣痛が始まり早産となり、子供は集中治療室(NICU=新生児集中治療管理室)でのケアが必要になりましたが、その子供も麻疹に感染していました(Pediatr Infect Dis J. 2009;28:166-7)。

 産婦人科病棟は、麻疹の妊婦を受け入れてくれません(他の妊婦に感染させたくないから)。NICUだって麻疹の「未熟児」を受け入れたくありません(他の「未熟児」たちに感染させたくないから)。内科病棟や普通の集中治療室(ICU)は、妊婦や新生児に慣れていないので、やはり患者を診ることは困難です。

 感染症の現場とは、そういうものです。感染症なんてかかったって、免疫力がつくからいいじゃん、なんて甘ったれた主張を医者が軽々しくするものではありません。

 このような悲惨なケースをなくすために私たちは予防接種の重要性を訴えているのです。そして近藤誠氏の詭弁や暴論を批判するのです。

同じ死亡率ならば「分母」が巨大になると「分子」も大きくなる

 次にインフルエンザです。「〜恐怖」88頁以降、とくにひどい誤謬について指摘します。

 まず近藤氏はインフルエンザワクチンについて「その年に流行するウイルス型がちがっていることのほうが多い。それでは重症化を予防できません」と述べていますが、これは間違いです。

 例えば、2004-05年のシーズンから、2016-17年のシーズンまでのインフルエンザワクチンの効果を、米国CDCがまとめています。これによると、インフルエンザワクチンがインフルエンザの効果を統計的に有意差をもって示すことができなかったのは、04-05年と05-06年の2シーズンだけ。他の年は全て一定のワクチンによる予防効果を示しています(https://www.cdc.gov/flu/professionals/vaccination/effectiveness-studies.htm)。

 近藤氏はまた、インフルエンザにかかっても登校したり出社しても「つよい免疫ボディー」がつくられるので問題ないと述べていますが、これも病気のリスクと免疫ができる利益のバランスを無視した暴論です。

 確かにインフルエンザひとつひとつが、人の死の原因になることはそう多くはありません。ですが、流行を無視して、何千万人、それ以上という患者が発生すると、相当数の方が死に至ります。分母の数が大きくなると、小さい死亡率も無視できない分子を生むのです。

 分子/分母=小さい死亡率

 分母が巨大になると、(同じ死亡率ならば)分子も大きくなる。一目瞭然です。死んでしまっては「つよい免疫ボディー」もへったくれもありません。

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