近藤誠氏「ワクチン副作用の恐怖」は真に妥当性のある意見なのか?~批評(1)

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接種を受けても受けなくても自己責任

 よく誤解されていることですが、日本の「定期接種」プログラムには接種義務はありません。予防接種を拒否する権利は十全にあるのです。このことは近藤氏もこう説明しています。「定期接種や勧奨というのは「国はワクチンをお勧めするけど、命じているわけではない。打つかどうか決めるのは、本人もしくは親なので、なにか不都合が生じたら自己責任ですよ」という意味です(ワクチン事故・自己責任の原則)」(5頁)。

 ただし、近藤氏は指摘し忘れているか、意図的に無視した点があります。

 それは、定期接種を拒否して、そのために予防できるはずだった感染症に苦しんだり、命を落としたとしても、それもまた自己責任ですよ、という事実です。この事実はとても重たい事実なので、決して看過してはいけません。

 一般的にリスクは双方向的です。Aを「行う」という選択肢と「行わない」、という選択肢の2つがある場合、両者どちらにも、必ず何らかのリスクが伴います。リスクゼロという選択肢はありえないのです。

「ワクチン導入前から病気のリスクは下がっている」は事実?

 予防接種には必ず副作用というリスクが伴います。一方、予防接種を拒否する場合には、その予防接種が防御する感染症のリスクが伴うのです。

 そして、リスクを検討するときの大原則は、すべての選択肢の、それぞれに伴うリスクを公平に吟味することです。あるリスクは過大に評価し、別のリスクを過小に評価するのは間違ったリスクへの対峙法です。

 近藤氏はワクチンのリスクには言及するけれども、ワクチンを接種しないリスクについては看過したり矮小化しています。すなわち、正しいリスク対峙ができていないのです。

 近藤氏が主張する「ワクチン導入前から病気のリスクは下がっている。だから、そのワクチンには必要性はない」は、BCGに限定して言えば正しいと私は思います。しかし、近藤氏はこれを麻疹や破傷風など、他の病気にも全面的に応用しています。これは間違った論拠に基づく間違った結論です。その根拠をこれから述べます。

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