医師の肥満に対する偏見が悪循環に(depositphotos.com)
肥満は恥ずべきことである(fat shaming)――。医療従事者の側がそんな考え方を抱いて接してくる場合、それが露骨な差別意識に基づくものではないにせよ、肥満患者の「心身面の健康が損なわれる」可能性が否めない。
そんな人種も国境も性別も年齢も超えて聞き逃せない新たな知見が、ワシントンD.C.で開催された米国心理学会(APA:8月3~6日)の年次総会で報告された。
当日のシンポジウムで登壇した米コネチカット大学心理学教授のJoan Chrisler氏は、医療現場で起きがちなこととして次のように主張した。
「たとえ医療従事者側に『肥満患者を励ましたい』『なんとか生活習慣を改善してほしい』との意図があっても、胸中に『恥ずべきこと』という概念があると、無意識のうちにも失礼な態度を示したり、肥満を理由に患者に恥をかかせてしまう」
患者は相手の態度や言動(あるいは言外)から、「過体重:overweight」や「肥満:obesity」に対するネガティブな感情を覚える。すると「自分は差別されている……」と感じてしまい、それが「ためらいの想い」につながり、結果、受診の遅れや治療の中断へと悪循環する。
「医療従事者が、太っている患者に触れるのにややためらうとか、体重の記録をとる際、つい首をふってしまうとか、舌打ちをしてしまう――こうした無自覚な態度(経験)から患者は『偏見を持たれている』と受け止めてしまう可能性が否めない」