たばこ自販機が消える日~東京五輪・パラリンピックが受動喫煙対策なしで開けない理由

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哲人・塩崎恭久厚生労働大臣の孤軍奮闘

 では、世界の本田に名指しされた「政府」のほうはどんな塩梅なのかといえば……。

 少し時計の針を戻して5月23日、衆院本会議場での一幕を再現してみよう。

 自席に腰掛ける安倍晋三首相を囲んでいた「自民党案」をまとめたトリオの、茂木敏充政調会長、田村憲久政調会長代理、渡嘉敷奈緒美厚労部会長。そこで総裁は隣席の塩崎厚労相の机をさすりながら、3人組に安倍スマイルでこう励ましたそうだ。

 「問題はこの人(塩崎氏)だね。任せるから今国会での成立をよろしく頼みますよ」

 が、厚労省案と自民党案の溝は埋まらず、「見送り」の顛末となった。その後も「哲人」塩崎氏は一歩も態度を譲らず、その矛先を今度は財務省へと向けて新たな場外戦へのキックオフを宣言したという次第だ。

 先制点を打ち込まれたかたちの財務省側は、業界からの反発や「営業の自由」などを守護神に踏ん張るしかなく、WHO条約の件も「推奨≠義務」との見解で交わしているのが現状だ。

煙の五輪は開けない!

 ところで自民党内の愛煙家といえば、どなたの名前を連想されるだろうか?

 最近では、例の「(がん患者は)働かなくていいんだよ!」の野次で糾弾された大西英男議員のスパスパ映像が記憶に新しい。

 もう少し大物スモーカーを列挙すれば、前掲の麻生財務大臣を筆頭に、いずれもたばこ議連所属の野田毅前税調会長、大島理森衆議院議長、石破茂元幹事長あたりの面々が代表格だ。

 ましてや支持率急落の安倍総理が「鶴の一声」で、その紫煙嗜好を制せるような方々ではないが、そこは「中間報告」なる憲政史上に残る汚点手段で共謀罪法案を強行成立してしまった内閣ではないか!

 思い起こせば件の共謀罪、政府は当初「テロ等準備罪」という巧みな語感の印象操作を行ない、共謀罪が成立しないと「TOC(国際的組織犯罪防止)条約に加盟できない」、同条約を締結できないと「東京五輪・パラリンピックは開けない」とさえ安倍総理は公言していた。

 であるならば、世界的見地からして、受動喫煙法が成立しなければ「東京五輪・パラリンピックは開けない」という毅然とした態度をなぜ取れないのだろうか。

 それこそ最大の皮肉を込めて、どうか総理、「健康増進改正案」こそ強行採決を! そう言いたくなるほど、国内の煙たさは変わらない。
(文=編集部)

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