ランニングは体も脳も鍛える(shutterstock.com)
正月の大学駅伝は青山学院大学の3連覇に終わった。さてマラソンにシーズンというものはあるのだろうか?日本では9月に入るころから少しずつフルマラソンが始まり、11月から2月くらいまではほぼ毎週のように各地でフルマラソンが開催されている。さしずめ今が最大のピークか。
フルマラソンに駅伝、軽いジョギングまで形はさまざまだが、ヒトはどうしてそんなに走りたがるのか? ランニングは本当に身体にいいのかどうか?。こんな疑問をよそに最近は脳の中の変化までわかり始めているらしい。
長距離走競技ランナーは、さまざまな脳の領域が活発化
アリゾナ大学の研究チームが、長距離走競技ランナーたちの脳とエクササイズをしない人たちの脳を比較したところ、ランナーの脳は、計画性、抑制力、 観察力、注意力の切り替え、マルチタスキング、運動制御などの認知機能に関わる脳の領域が活発化していると『Frontiers in Human Neuroscience』誌に発表した(ライフハッカー12月25日)。
発表によれば、研究チームは、大学生の競技ランナー11人と1年間まったくエクササイズをしなかった被験者11人の脳の活動をMRI(核磁気共鳴画像法)で6分間調べた。
その結果、思考力が高まると脳の活動量が多くなるランナーの脳の領域は、記憶、意思決定、情報処理に関わる領域と互いに連絡を取り合っていた。また、注意力が低下すると脳の活動量が少なくなるランナーの脳の活動量は、非ランナーよりも少なかった。
つまり、ランナーは非ランナーよりも集中力が高いと考えられる。
ランニングは単純作業ではなく、脳が複雑な指示を出し続けている
研究共同著者である神経科学者のGene E. Alexander氏は、この研究結果を踏まえ、「ランニングは一見頭を使わない単純作業のように見えるが、実は脳が複雑な指示を出し続けている」と指摘する。
ランナーは、周囲の環境を把握しつつ、どこに向かって走るのか、体調はどうかなど、過去のランニングの記憶から得られるさまざまな情報を脳に再現しながら意思決定している。ランニングは、体を鍛えながら脳も鍛えるのだ。。
ただし、この研究では、女性は月経があることから、研究対象から除外しているため、女性に対するエビデンスは明確ではない。さらには、ランナーだけでなく、長距離サイクリング、水泳、トライアスロンで規則正しいフィットネスを実践している人たちの脳を調べれば、同様の成果が出るかもしれない。
晴れた日こそ、時速7〜9km程度のイーブン・ペースを意識して走ろう
ランニングは、脂肪の燃焼、筋力の強化、体力の向上を促しつつ、体も脳も人生も鍛えてくれる。有酸素運動は、脳を活性化するのだ。ランニングすると、脳のどの部位が活性化するのだろう?
MRIなどの画像技術は、ランニングのメカニズムを解明したため、数多くの知見が結集されているが、今、注目されているのは脳のワーキングメモリーと呼ぶ前頭前野の「8野」と「46野」だ。脳の最高司令塔として様々な精神活動を司っている前頭前野。特にランニングによって活性化するのは、前頭前野の8野と46野だ。
脳の作業机、ワーキングメモリーと呼ばれる8野と46野は、暗算や会話など一時的な記憶を保持する機能がある。8野と46野を活性化すると、創造性や問題解決能力がますます高まる。ジョギングのペース(時速5km)なら、運動野や運動前野しか活性化しないが、時速9kmのペースを意識してランニングすれば、8野と46野は活性化する。
また、記憶や空間学習能力などの脳の認知力を司る海馬は、新しい記憶を集めて整理し大脳皮質へ送るので、記憶が定着する。海馬は、欲望やストレスを司る視床下部が暴走しないようにコントロールするため、海馬を活性化すればするほど、脳の認知機能や記憶力が高まり、ストレス耐性も強まる。
ただ、ランニングすれば、海馬が活性化するが、速いペースで走り過ぎると、ストレスを司る視床下部を刺激するので、時速7~8km程度のイーブン・ペースがベストだ。