インタビュー「職場でのうつ病の再発を防ぐ」秋山剛医師(NTT東日本関東病院精神神経科部長)第2回

「新型うつ」はどう治す?~心理的な背景にある〈偏り〉の改善がカギに

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「新型うつ」は詐病か?(shutterstock.com)

 うつ病で休職中の社員が、毎日決まった時間に病院に通い、同じうつ病の仲間とともに再発を防ぐためのプログラムを受けることが「うつ病のリワーク」と呼ばれ注目を集めている。

 今回は、うつ病の発症する要因と、周囲には軽症に見える、いわゆる「新型うつ」について、 NTT東日本関東病院精神神経科部長・秋山剛医師に話を聞いた。

うつ病は誰でもかかる可能性がある

──うつ病を発症させる要因には、どのようなものがありますか?

 病気には多数の遺伝子が関与していて、遺伝子と環境の相互作用で、病気が発症したりしなかったりします。つまり、遺伝だけで病気になるかどうかが決まるわけではないのです。これは精神疾患に限りません。

 うつ病には非常に多くの遺伝子が関与していると考えられます。また、遺伝子と環境の相互作用の中で、環境が及ぼす影響も大きいと考えられます。どんな人でも、非常にストレスのある環境に置かれたら、うつ病になる可能性があり、「誰でもうつ病になる可能性はある」は正しいと思います。

「新型うつ」は詐病か?

──以前、議論を呼んだ「新型うつ論争」では、「新型うつとは<怠け>なのか?」といった声がありました。

 「新型うつ」という名称は、メディアが作った俗称であって医学用語ではありません。新型うつと呼ばれている病気が、本当に昔にはなかった<新型>なのか、実は昔からあったけれど、あまり気づかれていなかっただけなのか、まったくエビデンスがありません。

 昔は精神科を訪れなかった軽いうつ症状の人が、最近になって初めて受診するようになった可能性が高いと思います。つまり、世の中には昔から存在していたけれども、以前は受診せず医師が目にすることはなかった。

 最近になって、医療機関を受診するようになったので、医師が「こんな人もいるのか、新型だ」と思っただけだと思います。医師にとっては<新型>からもしれませんが、本当に新しい病気ではないと思います。

 たとえば軽症のうつだと、会社を休職しているのにバイクでツーリングに行ったりします。そうすると「怠けじゃないか」と批判されます。ところが、ツーリングの後には、ものすごくグッタリしていたりしますから、100%怠けかといえばと、そうは言いきれません。

現況を<自分がもたらした>と認識できるか

──新型うつが従来のうつとは異なっている点についての説明として、しばしば「他罰性(他人を責める)」というキーワードが用いられています。これについて教えてください。

 他罰と対になる言葉は、「自責(自分を責める)」です。従来型のうつ病では、<自分が悪い>という訴えがよくみられ、自責が典型的な症状とされています。しかし、従来型のうつ病でも、実は、上司・同僚、家族など周囲の人への不満・恨みの気持ちもあったのです。

 周囲への不満・恨みがあるけれども、「そういう事態を招いたのは自分に非がある」というひねりが加わっていたわけです。

 症状が軽いと、「そういう事態を招いたのは自分のせいだ」というひねりが加わらず、「上司、同僚、家族が悪い」と主張がストレートに現れます。

 このとき重要なのは、「上司、同僚、家族とうまくいっていない状況」について、<自分が寄与している部分、影響している部分がある>と認識できるかどうかです。

 対人関係は、いつでも双方向です。周囲との関係の良し悪しには、必ず自分が影響している部分があります。周りの人との関係をよくしようとしても、他人を変えることはできませんが、自分を変えることはできます。
 
 ですから、自分が影響を及ぼしているところを振り返り、可能な点を<変える>ことで、はじめて状況の改善を図ることができるのです。
 
 うつのほかに、活動性が高まる躁の状態がある「双極性障害」についても、「軽症型があり、軽症型でもいろいろな問題が起きる」ことが分かってきました。

 こういう人たちを、専門的には「双極性スペクトラム」と呼びます。双極性スペクトラムの人は、症状がうつだけでなく、活動性が高かったり、自己主張が強かったりするので、これもまた<新型>のように見えます。

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