「損失隠し」と「からくり仕様」は同罪か!?
通称「国家公務員共済」は昨年10月以降に制度が変わったため、2015年度通期の運用実績は残されていない。しかし、制度改正後の下半期は約248億円のプラスを弾き出した。同じ下半期のGPIFが約660億円のマイナスであることを思えば、明暗の差は歴然だ。
前述のとおり、現在、両者の基本ポートフォリオの目標値は一見同じように設定されている。国内債券35%、外国債券15%、国内外株式50%、である。ところが、そのからくりは両者の「許容幅」の相違に隠されていた。
資産構成割合が基本ポートフォリオから乖離した場合、資産の入れ替えなどのリバランスを行なって解消を計る。
その乖離を許容する範囲を年金積立金管理運用用語で「乖離許容幅」と呼ぶが、これがGPIFとKKRでは大違い。結果、大幅赤字と黒字の違いを生んだ。
格安宿舎と民間家賃の格差並みか?
具体的な数字をみれば「格差」は歴然だ。国内債券での運用比率(中央値)は35%だが、KKRについては「±30%」もの乖離許容幅が与えられている。
つまり、建て前の35%から65%まで高めることが可能なのだ。比べて、国民の積立金の資産運用を任されているGPIFの同許容幅はいかほどなのか。
なんと、「±10%」なので、国内債券に関しては45%までしか運用比率を高められない。
実際、KKRの運用比率は国内債券が62%、国内外株式は僅か31%(15年3月末時点)。一方のGPIFがそれぞれ約37%、約44%である現実を俯瞰すれば「格差」は明らかだろう。
前者は<安全第一>の国内債券で優先運用が許され、国民側は<株価上昇トレンド>を目論む安倍政権の賭け金よろしく、強制的にハイリスクを背負わされているわけだ。
ならば「KKR側もリスクを高めろ」とは言わないが、こんな運用のリスク格差を知らされると、やはり怒りがふつふつと沸いてくる。
世界最大規模の虎の子(1兆2000億ドル)から「クジラ」とも称されるGPIFの運用資金。その影響力から、一度公表した国内外株式での運用比率を今さら下げることもままならない(なぜならば、大暴落が必至だから)。
となれば、またしても、過去の下げネタをリサイクルするしかないのだろうか。そう、今後も受給層ばかりが膨れるばかりのこの国の善良な民は……。いつかこの数字を思い出してきっと泣いてしまうだろう。
(文=編集部)