「産休・育休明けの人」を迎え入れる側の論理
もちろん、そんな誰の支持も得られないような人材と、皆へのシワ寄せを自覚して、人一倍恐縮しながら頑張る女性を十把一からげにしてしまうのはナンセンスだ。
ただし、内心がどうであれ、他人のシワ寄せを受け入れて残業を重ね、私生活を犠牲している独身者や子なし既婚者の立場も丁寧に描くドラマでなければ、ステレオタイプのヒロイン奮闘ストーリーで終わり、今日の共感を得られないだろう。
昨秋、育児中社員の働き方改革を取り上げたNHKの特集で“資生堂ショック”というコトバが踊った。要約すれば、育児中の時短勤務美容部員は平日の早番シフトに入るのがそれまで慣例化してきたが、店頭が多忙を極める土日や夕方の遅番シフトにも入ってもらうよう、同社が要請したというもの。
これは経年の会社自体の制度的甘えも是正し、全従業員の働き方を見直す“ワーク・ライフバランス”の観点から踏み切った英断だったらしい。ところが、その斬新性をうまく伝えられず、“資生堂ショック”はネットで炎上した。
その後日談として資生堂OBでワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏が語った、次のコメントが印象的だったので引いておこう(東洋経済ONLINE2016年02月21日より)。
「10年進んだ企業だからこそ出来たことを、マスコミは取材の際に理解できなかった。それはきっと、マスコミが女性活躍で10年遅れているからだ」
はたして『営業部長 吉良奈津子』は、有村架純・高良健吾のW主演でリアルな介護現場やブラック企業を描き出して話題を呼んだ月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の域まで挑戦できるのか……。
安倍政権は「女性の活躍」を成長戦略の柱に据え、安倍首相は「すべての女性が輝く社会」を連呼している。よくあるヒロイン奮闘物語で終われば、少子化対策や女性活躍推進をはじめとする「一億総活躍社会」実現の“御用ドラマ”と酷評されかねない。
『営業部長 吉良奈津子』は“不都合な現実”にどこまで切り込めるのか、期待を込めてドラマの行く末を見守りたい。
(文=編集部)