性同一性障害の受刑者に適切な医療措置を! ホルモン投与がストップすれば重大な健康被害も

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認定医によるチーム医療こそがGIDの受刑者の人権と健康を守る

 『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM-5)によると、GIDは身体的性別と性自認が一致しないトランスジェンダーに見られる性別違和だ。つまり、男性または女性であることの自己の統一性・一貫性・持続性が欠けている状態だ。身体的性別が女性で性自認が男性の人をFTM(Female to Male)、身体的性別が男性で性自認が女性の人をMTF(Male to Female)と呼ぶ。

 このようなGIDを抱える人が、その性同一性に適合するように外科的手法によって行う内外性器に関する手術、それが性別適合手術(Sex Reassignment Surgery:SRS)だ。女性から男性への手術 (FTM SRS)は、子宮卵巣摘出術、膣粘膜切除・膣閉鎖術、尿道延長術、陰茎形成術を行う。男性から女性への手術 (MTF SRS)は、精巣摘出術、陰茎切除術、造膣術、陰核形成術、外陰部形成術を行う。

 法務省はGIDの処遇改善も進めている。男性から女性への手術 (MTF SRS)を行った受刑者に対しては、 戸籍上の性別変更前でも入浴や身体検査は女性職員が対応するように通逹。女性から男性への手術 (FTM SRS) を行った受刑者に対しても、同様の措置がとられていると見られる。

 法務省によれば、2015年6月現在、全国でGIDまたはGIDの傾向があると診断された受刑者は約50人と少ないため、処遇改善のノウハウが十分に蓄積されていないと釈明を重ねている。

 しかし、中塚教授(GID学会理事長)は「性的少数者であるGIDに対してどのような対処や処遇が望ましいのか、社会問題として議論をより深めなければならない。そのためにもGIDに関する幅広い知識と能力を備えたGID学会の認定医によるチーム医療が欠かせない」と強調している。

 受刑者は何らかの犯罪に手を染めて勾留されているので、合法的に身体的・精神的・社会的な自由や権利を制限されるのはやむを得ない。だが、犯罪者にも「法の下の平等」は保証されている。

 憲法第18条は「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と奴隷的拘束及び苦役からの自由を掲げる。憲法第31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と罪刑法定主義の保障を主張している。

 憲法の理念に照らし合わせるまでもなく、起訴前(被疑者)、起訴後(被告人)に関わりなく、GIDの受刑者の人権と健康は厳に守られなければ法治国家の大義は成り立たない。法務省の処遇改善を待つだけでなく、世論の盛り上がりや合意形成も欠かせないだろう。
(文=編集部)

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