消費者庁が因果関係の解明に動く
こうした状況に国も動き始めている。消費者庁の消費者安全調査委員会は、2014年12月に隣家の「エコキュート」で不眠や頭痛などを発症したとする群馬県高崎市の夫妻の訴えに対し、「低周波音が関与している可能性がある」との報告書を公表。
さらに昨年の11月には、同様に苦情が相次ぐ「エネファーム」や家庭用ガス発電・給湯暖房システム「エコウィル」に関しても、運転音や振動と健康被害との関係を調査することを決めている。
一方、「エコキュート」の普及に取り組む一般社団法人・日本冷凍空調工業会は、設置業者向けのガイドブックで、「寝室のそばへの設置を避ける」「稼働音の反響を軽減するため壁から距離をとる」「隣家の窓と向き合わないように設置する」などの対策を促している。
「健康被害との関連が不明でも苦情が出ている以上、注意喚起に努める」という。
実際のところ、低周波音被害は人類が初めて体験する未知の疾患だ。確かなのは、技術の発達とともに低周波音を継続的に発する多くの機器が普及し、これに敏感に反応する人が増えてきたことだけだろう。
低周波音による不調は頭痛やめまい、イライラ、胸の痛み、不眠など人によってまちまちだ。いわゆる「不定愁訴」であり、検査をしても原因となる疾病が見つからないため、心理的な問題を指摘する専門家もいる。
現在これといった治療法はなく、原因を取り除く以外に方法はない。低周波音に強く反応してしまう人がいる一方で、まったく何も感じない人がいることも理解が進みにくい一因だろう。
日本の環境政策を定める「環境基本法」には、「大気汚染」「水質汚濁」「土壌汚染」「騒音」「振動」「悪臭」「地盤沈下」の七つの公害が列挙されているが、そこに低周波音は定義されてない。だが、健康被害の訴えは年々増加しており、潜在的な被害者はもっと多いかもしれない。
早期の因果関係の解明とともに、公的なガイドラインの作成と法整備を望みたい。
(文=編集部)