息まない!急がない!下痢しない!
痔の原因は何か?
ストレスや過労が強まり、免疫力が低下すれば、肛門内が大腸菌などの感染による炎症を起こし、便秘や下痢を伴いやすくなる。
座りっぱなしや立ちっぱなしで同じ体勢を長時間続けたり、運動不足に陥ると、肛門の静脈がうっ血し、血流が悪くなる。
唐辛子やタバスコなどの辛い食べ物は、吸収されずにそのまま排便されるので、肛門の粘膜が刺激され、炎症を起こしやすくなる。
アルコールは、肛門部に大量の血流を伴うことから、肛門にうっ血が起こりやすくなる。
たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管を収縮させるため、肛門の血流が悪化し、うっ血が起こりやすくなる。
このような生活習慣のほか、排便時の負担や不注意も原因になる。
たとえば、排便時に強くいきみ過ぎたり、トイレで長い間いきむと、肛門中の圧力が高まり、肛門周辺の静脈に強い負担がかかるので、いぼ痔になりやすくなる。
また、身体が冷えると、身体全体の血管が収縮し、肛門周辺の血流が悪化するので、肛門周辺の静脈がうっ血しやすくなる。
痔を改善する5つのポイント
痔を改善する対策をまとめよう。
①スムーズなお通じを心がける。
食べ物と飲み物から1日2ℓの水分を摂り、ちょうどいい硬さの便になるように心がける。コンニャク、ヒジキ、コンブ、ワカメなどの食物繊維が豊富な食材も快便につながる。下痢しやすい人は、暴飲暴食や冷たい物の摂り過ぎに注意しよう。
②排便の気配に素直に従う。
健康的なお通じは、およそ3分以内に完了する。時間がかかりそうな時は、息んで出し切ろうとせず、次の便意が来るまでじっくりと待ち、自然な排便を。便意を感じたら、がまんしないで、すぐにトイレへ行こう。
③座りっぱなし、立ちっぱなしを避ける。
座りっぱなし、立ちっぱなしは、お尻のうっ血につながる。仕事柄、避けられない人は、時々姿勢を変えたり、歩いたり、脚や股関節のストレッチをしたり、マッサージしたりして、下半身の血流を促そう。
④お尻をいつも清潔に保つ。
排便後はウォシュレットで洗浄し、お尻を常に清潔に。ウォシュレットがなければ、赤ちゃん用のおしりふき(トイレに流せるタイプ)を使おう。
⑤お尻を温めてリラックスする。
体を冷やすと血行が悪くなり、免疫力が低下する。シャワーだけでなく、できるだけ湯船につかって温まり、冷えによる下痢を予防しよう。温まると心身の緊張が緩むため、切れ痔の痛みも和らぐはずだ。小さいホッカイロの熱が肛門に届くようにパンツの上から貼り付けても、血流が良くなる。
だが、どうしても出血や痛みで困ったら、漢方薬や外用薬を使うセルフケアも、日帰り手術の選択肢もある。
痔にやさしい良薬はこれ!
痔の止血と便通の改善に役立つ市販薬には、症状に体質を加味して選ぶ漢方薬と、症状で選ぶ軟膏、座薬、便秘薬などがある。医療機関を受診した時も、軽症から中等度の痔ならば、これらの薬が処方される。
たとえば、いぼ痔の出血には止血効果が優れた槐角丸(かいかくがん)、軽い便秘の便通を整え、いぼ痔のうっ血を取る乙字湯(おつじとう)、血行の悪さを改善し体調を整える桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、血行を良くしながら便を軟らかくする桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、暑がりでのぼせがある人の痔出血には、熱を冷ます黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、貧血ぎみで冷え性の人の痔出血には、芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)などが処方されることが多い。
その他、頑固な便秘には、マグネシウムの浸透圧作用で腸管に水を引き出す塩類下剤、脱肛には、不足したエネルギーを補いつつ下垂感を止める補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、あな痔には、膿を出しやすくして皮膚や粘膜の炎症を鎮める千金内托散(せんきんないたくさん)、切れ痔や外痔核の血豆の痛みには、ステロイド軟膏なども効果が期待できる。
だが、これらの薬を1週間ほど試しても薬効がなければ、肛門科を必ず受診してほしい。