シリーズ「冬こそ注意したいちょっとした病気の兆し」第1回

寒い時期に起きやすい「下肢静脈瘤」の恐怖〜逆流防止弁が壊れて血液が戻らない!

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 下肢静脈瘤は、まず見た目に正常な血管でないと分かるが、女性ならスカートがはけない、人前で足を見せることができないなど、外見的な兆候が強まる。

 やがて、足がだるく重い、足がむくんで疲れやすい、歩行時や就寝時に足がつる、痛みやかゆみを感じるなどの自覚症状が出る。進行すれば、皮膚炎、湿疹、色素沈着を伴うことが少なくない。

 さらに、血液の循環が悪いため、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)や下腿潰瘍に進行する恐れが強まる。下腿潰瘍は、下肢のふくらはぎの下の部位に生じた慢性の湿疹や血行障害による潰瘍だ。

 下肢静脈瘤の治療法には、硬化療法、ストリッピング手術、高位結さつ術、圧迫療法、レーザー治療などがある。

 「硬化療法」は、静脈内に硬化剤と呼ぶ薬剤を注入して血管を閉塞させ、静脈瘤を消失させる。手術のような傷は残らず、体の負担も少ないが、クモの巣状静脈瘤などの細い静脈瘤に有効な治療法だ。

 「ストリッピング手術」は、血管内にワイヤーを通して静脈瘤血管を引き抜く。太い血管の伏在静脈瘤の標準的な治療法だ。半身麻酔や全身麻酔で行われ、傷も残りやすい。手術後の痛みが強く、皮下出血、神経障害などの後遺症を伴うことがある。

 「高位結さつ術」は、弁不全のある静脈と深部の静脈の合流する部位を糸で縛って血液の逆流をくい止める。局所麻酔で行われ、傷はストリッピング手術よりも小さいが、入院が必要になる場合がある。再発率が高いため、多くは硬化療法と併用される。

 「圧迫療法」は、伸縮性の強い医療用の弾性ストッキングを履き、拡張した血管を圧迫して下肢に血液が溜まるのを防ぐ。深部静脈への血流が促がされ、下肢全体の血液循環が改善されるので、だるさや足がつるなどの症状が緩和される。妊娠中や仕事の事情などで、手術できない場合に行なわれる。

 「レーザー治療」は、壊れた逆流防止弁にレーザーファイバーを通し、血管内からレーザーを照射する血管内治療と、皮膚表面からレーザーを照射し、皮膚下にある静脈瘤を収縮させる治療がある。
 
 「血管内治療」は、太い血管の伏在静脈瘤や側枝静脈瘤に行なわれ、皮膚表面からレーザー照射する治療は、細い血管の網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤に活用されている。レーザー手術は、治療時間が短く、体に負担が少なく、再発率が低いメリットがある。

 このように、下肢静脈瘤は、立ちっぱなしの状態を続けると、重力によって血液が戻りにくくなるために、血液が足の静脈に滞りやすくなり、逆流防止弁が働かなくなって発症する。自然に治ることはなく、加齢とともに悪化する。とくに血行が悪い冬は起きやすいので、注意が必要だ。

 前述したような自覚症状が少しでもあれば、下肢静脈瘤の疑いがあるので、血管外科や静脈瘤専門クリニックなどで適切な診断・治療を受けてほしい。
(文=編集部)

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