お金持ちは健康のため、貧困層は家事のための運動。中国で拡大する「健康格差」とは?

この記事のキーワード : 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 最近、筆者はほぼ毎年、共同研究のため上海を訪れています。そして、予防医療の現場を見て回っています。そして、訪れる度に、中国が生活習慣病の予防に強烈に力を入れ始めていることを強く感じます。

 特筆すべきは、実務、研究を問わず、予防医療分野に有望な若手人材が集まってきていることです。研究論文の筆頭著者のMingling Chen氏もその一人です。彼女は四川大学を卒業し、複旦大学公衆衛生大学院の修士課程で学んでいる学生です。研究への意識も高く、昨年、筆者の前任の山形大学に研究をさらに進めるため1ヶ月滞在しました。筆者も、その意欲と、優秀さに舌を巻きました。

 「健康格差」は、日本にとっても決して人ごとではありません。すでに日本からもSESの低い人々は、喫煙や運動不足といった好ましくない生活習慣病を持つことが報告されています。さらには、がん検診の受診率も収入の低い人々は高い人々と比べると約半分であることも報告されています。よって、我が国でもSESは健康行動や検診・健診の受診の違いによって、疾患の罹患率や死亡に影響を与えている可能性は高いでしょう。

 今回の研究では中国の先進国化の恩恵が受けられる人々と受けられない人々で「健康格差」が生まれていることが分かりました。中国の先進国化の次に待ち受けるのは高齢化社会です。社会的格差大きい社会が、高齢化社会を迎えれば、さらに大きな「健康格差」が生じる可能性が高いでしょう。

 しかし、それを克服するための対策を中国は強力に、かつ戦略的に、推し進めるはずです。これは、目立ちませんが、しかし、しっかりと「健康格差」が存在する日本にも必ず参考になるでしょう。中国の行き先から当面、目が離せません。

成松 宏人(なりまつ・ひろと)
神奈川県立がんセンター臨床研究所 がん予防・情報学部部長、医学博士

※編集部注:メッツ・時 身体活動の量を表す単位。身体活動の強度(メッツ)に身体活動の実施時間(時)をかけたもの。

※参考文献
1) 今回紹介した研究です。無料で閲覧できます。
Chen M, Wu Y, Narimatsu H, Li X, Wang C, Luo J, Zhao G, Chen Z, Xu W. Socioeconomic Status and Physical Activity in Chinese Adults: A Report from a Community-Based Survey in Jiaxing, China. PLoS One. 2015;10(7):e0132918.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26177205
2) 近藤克則著 「健康格差社会」 医学書院
3) 近藤克典編集 「検証 健康格差社会」 医学書院
4) 福田吉治,今井博久 日本における「健康格差」研究の現状 J. Natl. Inst. Public Health, 56(2), 56-62 : 2007

(2015年9月4日 MRICより転載)

バナー1b.jpeg
HIVも予防できる 知っておくべき性感染症の検査と治療&予防法
世界的に増加する性感染症の実態 後編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

前編『コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症』

毎年世界中で3億7000万人超の感染者があると言われる性感染症。しかも増加の傾向にある。性感染症専門のクリニックとしてその予防、検査、治療に取り組む内田千秋院長にお話を伺った。

nobiletin_amino_plus_bannar_300.jpg
Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

あおぞらクリニック新橋院院長。1967年、大阪市…

内田千秋

(医)スターセルアライアンス スタークリニック …

竹島昌栄

ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会…

後藤典子