原因が明らかでない腰痛の総称を非特異的腰痛と呼び、原因が明らかな腰痛と区別している。
「原因が明らかでなくても、ぎっくり腰のように動作で痛みがある場合は、椎間関節や椎間板、筋肉などに何らかの負荷がかかり痛みを発生させていると考えられます。脊椎由来の原因が明らかな腰痛としては、腫瘍、感染症、骨折などの外傷、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、脊椎すべり症などがあり、これらはその原因疾患の治療を行う必要があります。またここで言うぎっくり腰とは少し違いますが、急性腰痛の原因には内臓や心臓血管系に由来する病気もあり、生命に危険が及ぶこともありますので注意が必要です」
骨折や腫瘍、感染症、神経障害(脚の麻痺や排尿排便の障害など)などがあれば、入院が必要となる可能性がある。そのほかの原因であっても、日常生活が送れないほどの強い痛みがあれば入院、さらに場合によっては、手術の必要もあるから、要注意だ。
「治療は原因疾患によって異なりますが、安静と薬による治療が中心となり、場合によっては手術が必要なこともあります。痛みが落ち着いてきたら、日常生活に戻るためのリハビリを始めます。安静によって低下した体力や筋力・柔軟性を取り戻すことや、腰部を安定して支えることができるように訓練します」
ぎっくり腰を始めとするよ痛のリハビリのポイントは?
リハビリテーションの要は、運動を取りいれた方法だ。
「痛みが強い場合には、コルセットをして腰を支え安静にし、痛みを軽減する薬を処方します。リハビリは物理療法と運動療法に大別され、物理療法とは電気や温熱刺激を加えることで痛みの軽減を図る方法で、運動療法とは硬くなった筋肉を伸ばしたり、弱った筋肉を強化するなど、腰をうまく支えることができるように、運動を取り入れた方法です。また、最近は心因的側面が注目され、認知行動療法といった心理学的治療も行われています」
気になるのは、柳沢慎吾さんのように、治ったかと思ったら、再発してしまうなど、何度もぎっくり腰を繰り返すことだ。防止の方法を瀬戸口先生が次のようにアドバイスする。
「ぎっくり腰を繰り返すのは、腰椎が不安定であったり、過剰に動いてしまっているのが原因です。例えば、体を捻る動作(体幹の回旋)は、構造的に腰椎よりも胸椎部でたくさん回旋する仕組みになっていますが、胸椎が硬くなるとその分腰椎の回旋が増えることになります。45°体幹を回旋するためには、通常ではおよそ腰椎部が10°、胸椎部が35°程度回旋をすることになりますが、胸椎部が硬くなり20°しか回旋できないとすると、腰椎部で25°回旋しなくてはならなくなり、腰椎の動きが過剰になります。前屈や中腰の姿勢でも同じように、股関節の動きが硬ければその分腰椎部が過剰に曲がることになります。これに加え、腰椎を支える腹筋や背筋が弱っていたり、筋力のバランスが崩れていると、腰椎をうまく支えることができず不安定になります」