鳴り物入りで導入されたSGLT2阻害薬 FDAがケトアシドーシスに警告

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次々と新薬が出てくる糖尿病治療薬shutterstock.com

 米食品医薬品局(FDA)はこのほど、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬により2型糖尿病患者に糖尿病性ケトアシドーシスが生じたとの報告が相次いだことを踏まえ、安全性情報を発した。

 SGLT2阻害薬は近年登場した血糖降下薬で、腎臓に働きかけ、血液中の過剰な糖を尿中に積極的に排出させる作用がある。糖尿病治療を行いながら痩せることもできると注目され、米国ではInvokana (一般名:カナグリフロジン)、Invokamet (カナグリフロジンとメトホルミンの合剤)、Farxiga(ダパグリフロジン)、Xigduo XR (ダパグリフロジンと徐放性メトホルミンの合剤)、Jardiance(エンパグリフロジン)、Glyxambi(エンパグリフロジンとリナグリプチンの合剤)の商品名で販売されている。

 日本ではスーグラ(一般名:イプラグリフロジン)、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)、ルセフィ(一般名:ルセオグリフロジン)、デベルザ、アプルウェイ(一般名:トホグリフロジン)、カナグル(一般名:カナグリフロジン)、ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)(2015年4月現在)

 FDAでは2013年3月~2014年6月にSGLT2阻害薬によってケトアシドーシスが誘発された20症例の報告を受け取った。米国糖尿病協会(ADA)によると、ケトアシドーシスは血中のケトン濃度が高くなりすぎて体液が酸性に傾く状態で、治療が遅れると糖尿病性昏睡や死に至ることもある。

 米国での20症例は全員、救急治療室で治療を受けるか入院に至った。ケトアシドーシスは通常1型糖尿病患者で起こる病態だが、今回の20症例はすべて2型糖尿病患者であり、1型糖尿病患者の場合とはやや異なる症状を呈していたという。

 SGLT2阻害薬は、成人2型糖尿病の血糖降下のために食生活および運動療法との併用で用いられることになっている。SGLT2阻害薬の添付文書に改訂が必要かどうかについては現在FDAで調査中だ。

 今回の安全性情報では、SGLT2阻害薬の処方を受ける患者はケトアシドーシスの徴候を見逃さないよう自分でも気をつける必要があり、呼吸困難や吐き気、嘔吐、腹痛、意識混濁、異常な疲労感や眠気といった症状がみられたら、すぐに受診すべきであるとされている。

昨年4月より国内では10名が死亡

 ケトンは簡単な尿試験紙で検知できる。このためADAでは、SGLT2阻害薬の処方を受ける患者はいつどのようにケトン検査を行ったら良いのか、担当医に聞いておくべきだと助言している。

 患者は医師に相談なく勝手に糖尿病治療薬の服用を中止すべきではない。FDAは、ケトアシドーシスの発症が確認された場合、医師はSGLT2阻害薬の投与を速やかに中止し、症状改善に向けた対応と血糖モニタリングを開始する必要があるとしている。

 日本では昨年4月以降にこの薬を服用した患者10人が死亡している。糖尿病専門医から成る「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」のを発表し、重篤な副作用について再度の注意喚起を行っている。ある糖尿病専門医は、「素晴らしい治療薬だと騒がれて急速に広がった。臨床的には"切れがある"という感想を持つが、そのぶん投与には慎重にならざるを得ない」と語る。
(文=編集部)

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