女性用バイアグラは円満な夫婦生活をもたらす!?shutterstock.com
米国食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は先ごろ、閉経前女性の性欲減退を回復させる薬剤、いわゆる「女性用バイアグラ」であるフリバンセリンについて、賛成18票、反対6票で承認を勧告することを決定した。ただし、承認には適切な警告表示や薬剤の作用に関する教育などの条件を付けるべきだとしている。
同薬のこれまでの試験では、失神、吐き気、めまい、眠気、低血圧などの副作用の可能性が示されており、今回の勧告は同薬の効果を「中等度」または「わずか」とするやや消極的なものだと、ワシントンポストは報じている。
FDAは諮問委員会の勧告に従うのが通例であるが、強制されるものではない。正式な承認は夏の終わり頃となる予定だという。今回の再申請は女性団体などの強いロビー活動を受けてのもの。製薬各社は1990年代後半のバイアグラ承認以降、女性用性欲促進剤の承認取得を試みてきた。
性欲減退障害は、性行為への関心や性的志向が失われた状態をさす。原因としてはうつ病、不安、ストレス、人間関係の問題、過去の経験や、抗うつ薬(特に選択的セロトニン再取込み阻害薬)、抗けいれん薬、化学療法薬、ベータ遮断薬、経口避妊薬などある種の薬の使用、過剰な飲酒などと同様に性欲を減退させる。また、ホルモンの変化も原因となることがある。
そもそも初めてこの種の治療薬の申請が出されたのがドイツのベーリンガーインゲルハイム社の「フリバンセリン」。2010年には、効果が副作用を上回っていないという理由で承認を却下されている。却下後、この会社が権利をスプラウトファーマスーティカルズ社(ノースカロライナ)に売却、同社は臨床実験を重ね、今回FDAへ再申請したものだ。
5カ月服用で性欲が増大
バイアグラが男性器への血流を増大させることにより効果を発揮するのに対し、フリバンセリン(商品名はAddyiとなる予定)は、脳内化学物質ドパミン、ノルエピネフリン、セロトニンのバランスを変化させることにより閉経前女性の性的欲求低下障害(HSDD)を治療する。
ロサンゼルスタイムズによると、製造元のスプラウトファーマスーティカルズ社が実施した臨床試験では、平均36歳の女性被験者が同薬を5カ月間服用した結果、プラセボ群に比べ性欲が増大し、苦痛が減少して満足感が向上したという。
FDAは2013年にも、効果の低さと副作用を理由に同薬の承認を拒否しているが、Sprout社をはじめとする数社の資金提供を受けた団体が、女性の権利の問題としてFDAに圧力をかけていた。ある団体はオンライン嘆願書のなかで「女性は性に関して平等に治療を受ける権利がある」と訴え、約2万5,000人の支持を集めている。AP通信によると、最新の申請では、FDAの要求に基づいて同薬による運転能力への影響に関する情報が加えられたという。
一方、非営利組織である全米女性保健ネットワーク(NWHN)は、「この薬剤の問題点はFDAによる性差別ではなく、薬剤そのものにあることは明らかだ」として、FDAに対し同薬の承認を拒否するよう求めている。同組織の専務取締役Cindy Pearson氏は、諮問委員会の決定に遺憾の意を示し、「人々はFDAを信頼して薬剤や医療機器の安全性と効果を確認しているが、今回のケースでは、十分な情報に基づいた決定ができるかどうか極めて疑わしい」と述べている。
近い将来、日本でも両性バイアグラ服用カップルが登場するのか!?
(文=編集部)