香りに癒やされ長寿も期待!? kostrez/PIXTA(ピクスタ)
薬効の発見が人類の歴史まで遡る、古くから人々に利用されてきたハーブ。中でもギリシャ語で「大地のリンゴ」を意味するカモミールは、4000年以上前のバビロニアですでに使用されていた、最古の民間薬のひとつだ。
そのカモミールに、最新の研究でさらなる可能性が見いだされた。今年5月、『The Gerontologist』(オンライン版)に掲載されたテキサス大学の研究によると、カモミールティーを飲む習慣がある女性は、飲まない人より寿命が長くなることがわかったという。
"女性限定"で長寿効果が判明
今回の研究は、65歳以上のメキシコ系アメリカ人男女 1677人を7年間にわたって追跡調査したもの。それによると、1677人のうち14%にカモミールティーを飲む習慣があった。
その結果、「女性に限り」カモミールティーの飲用習慣があるグループの総死亡率(あらゆる病気で死亡する確率)は、飲んでいないグループよりも29%も低かった。
この数字は、健康状態や生活習慣など、死亡率に影響するさまざまな要因を考慮した結果だという。ところが不思議なことに、男性ではカモミールティーの飲用習慣の有無による死亡率の違いは見られなかった。
テキサス大学の研究者は「女性のほうが男性よりもカモミールティーをよく飲むのは事実だが、死亡率との関係が女性だけに見られた理由も、カモミールの飲用習慣が死亡率を下げる理由もよく分からない」という。
女性は伝統的に主婦として健康に感心を持っていることや、民間療法でのハーブの効能により信頼をおいているということも関係しているのでは、ともいわれているが、それはひとつの推測だ。
細胞の老化を防ぐ効果に期待
カモミールには、非常に多くの効果効能があると伝えられている。リラックス効果が高く、安眠や疲労回復に最適だ。腹痛、痙攣、月経痛などの女性特有の痛み、肌荒れ、花粉症を緩和し、粘膜の炎症を抑える。利用方法も、お茶や料理、アロマ、ポプリのほか、家庭薬、入浴剤など幅広い。
さらに、カモミールに含まれているフラボノイド色素アピゲニンには抗酸化作用がある。そのため、最近はカモミールティーがガン予防に役立つと取り上げたテレビ番組があるほどだ。
近年、心筋梗塞やがん、アルツハイマーなどの加齢に伴う病気の発症に関係するものとして注目されている糖化という反応がある。体内の余分な糖分がタンパク質と結びつき、結果、強力な「老化促進物質」を作り出し、身体の細胞を老化させる現象だ。
ところが、カモミールに含まれているカマメロサイドという物質は、糖化による一部の有害物質の生成を阻害する効能があるため、細胞の老化を防ぐのではないかと考えられている。
カモミールの成分が細胞を若々しく保ち、その結果、長寿がもたらされるとすれば、今回の研究結果に結びつく可能性があるだろう。
香り高いハーブティーで長生きできるのなら、生活に取り入れる価値がある。最新の科学によって、ハーブの持つ効果効能の解明が、より一層進展することに期待したい。
(文=編集部)