ダウン症候群治療の可能性をマウスで検証 出生前診断国際シンポジウムで

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講演するダイアナ・ビアンキ教授

 出生前診断は受けるべきかどうか? 通常の妊婦さんだけではなく高齢出産の増加や不妊治療の結果としての妊娠など、出生前診断への関心が高まっている。2013年4月からは、母体の血液検査だけでダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーなどの可能性を判定するいわゆる「新型出生前診断」(NIPT)が臨床研究として限定された施設で始まった。

 導入から約1年後には、陽性と判定された142人のうち、113人の異常が確定し、97%に当たる110人が人工妊娠中絶をしたとの発表があった。この報道を受けて生命の選択の問題が取りざたされ、安易な人工中絶というイメージが再び大きくなっている。

 もちろんNIPTは確定診断ではなく、可能性の判断をするに過ぎないのであるが、この検査をどう考えるかは、国や地域、文化や倫理観などの違いによってさまざまな意見が錯綜する。

 本来、医療において検査と治療は車の両輪のようなもので、片方だけが突出して進歩するとさまざまなハレーションを生じる。診断したとしてもどうしようもないとすれば、検査する意味が無いのではないか...。だとすれば、検査の意味は病気を抱える可能性のある胎児を排除するだけではないのか...。こんな意見が出るのもいたし方のないことかもしれない。

細胞への酸化ストレスがダウン症候群を引き起こす

 2月13日に開催された国際シンポジウム『出生前診断とその国際動向2~脅威(Threat)からチャンス(Chance)へ』(主催:社団法人未来の胎児と医療を考える会)では、胎児治療の新しい可能性が報告され、大きな注目を集めた。
 
 新型出生前診断の世界的権威であるアメリカ・タフツ大学のダイアナ・ビアンキ教授の報告によると、NIPTの実施件数は2011年を基準にすると2014年まででほぼ倍増し、世界中ですでに100万件を超えるといわれ、出生前医療における革命的状況となっていると説明。こうしたNIPTを脅威と考えるかチャンスと考えるかは地域や民族でも差があるものの、ビアンキ教授はチャンスと考えているとした。

 その理由として、NIPTが妊娠12週までに行われたと仮定すると、妊娠28週目までの間に胎児脳の発達に影響を与えるチャンス、つまり治療のチャンスがあるということだ。

 ビアンキ教授によると、トリソミー21を有する胎児羊水中の遊離型胎児RNAの分析でダウン症候群の主要な問題が酸化ストレスであるとわかったため、母体を通じ強力な抗酸化作用物質を投与することで、ダウン症候群への早期の治療が可能であるとの仮説を立てた。

 酸化ストレスは、活性酸素が体内で脂質、蛋白質、糖、核酸などを酸化変性させ、細胞機能を障害するもので、ダウン症候群の場合、ミトコンドリアの機能不全が引き起こされ、その結果、胎児初期(妊娠16週~22週)に脳全容量、小脳の容積、海馬でのニューロン数などの低下につながる。さらに寿命に関係するといわれる細胞のテロメアが短縮してしまう。

 こうしたさまざまな細胞障害のため、ダウン症候群の主たる問題である学習と記憶障害が引き起こされている。「妊娠の早期に脳における神経細胞、神経幹細胞の数的減少が認められているのであるから、成人期まで治療開始を待ってはあまりにも遅すぎる」とビアンキ教授は言う。

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