福祉車両購入を手助けする専門店が全国に展開
さまざまな理由でハンディキャップを負った人が、より楽に生活できる、活動範囲が広がるように作られた「福祉車両」。しかし、まだまだ世の中への認知・訴求は十分とはいえない。そんな現状に対して自動車メーカーのダイハツ工業は、独自のアプローチで福祉車両の普及を目指している。
その取り組みのひとつが販売店改革だ。実は一般にはあまり知られていないことだが、自動車メーカーとその販売店であるカーディーラーは、法人的には別会社。各地域の自動車販売店は自動車メーカーと契約を結ぶことで、看板などが使えるようになり、商品である自動車も仕入れられるようになる。しかし、販売店で働いているスタッフは、自動車メーカーの従業員ではないのだ。
ダイハツでは福祉車両を「フレンドシップ」と名付け、これまでもフレンドシップの販売そのものは全国の販売店で対応はしていた。しかし、ユーザーそれぞれの用途にあった福祉車両を的確にガイドするには、購入時の注意や使用時の注意、税制措置、補助金の利用など、多岐にわたる専門知識が必要だ。
もちろん、販売店スタッフは商品知識を高めるために勉強するし、自動車メーカーも研修会を実施するなどの努力を行っている。だが、現実的にはユーザーの絶対数の多い普通車が優先されることが多く、手間のかかるフレンドシップについてはどうしても後手にまわってしまうことが多かった。
そこでダイハツは、全国の販売店に協力を呼びかけた。福祉車両のスペシャリストが常駐し、店舗そのものもバリアフリー化した福祉車両のスペシャルショップを作り、それを認定する「フレンドシップショップ制度」を作り上げたのだ。資本関係がない販売店に対して、これは業界的には異例中の異例ともいえる呼びかけだった。しかし、多くの販売店がこれに賛同し、認定制度はスタートすることになった。
福祉車両専門店に認定されるための3つの条件
認定をクリアするための基準は3つだ。
①店舗のバリアフリー化。広いスペースの車椅子利用者優先駐車場、段差のない出入り口、そして車椅子の方が利用しやすいトイレを備えること。
②専門資格を持ったスタッフ。これは、店長を含めた2名以上のスタッフが社団法人日本福祉車輌協会認定の資格「福祉車輌取扱士」を取得すること。
③福祉車両の実車を用意すること。お店に「車椅子移動車」と「昇降シート車」の両タイプを用意し、ユーザーが実際に見て・触れて・試すことができるようにする。
2015年2月現在、全国で85店舗が「フレンドシップショップ」として認定されている。どんなに素晴らしい福祉車両を作り上げても、その便利さや使い方がユーザーに伝わらなければ意味がない。会社の垣根を越えて実現した「フレンドシップショップ」という取り組みは、ダイハツが本気で福祉車両に取り組んでいる証であり、販売店とそこで働くスタッフたちの熱意の現れと言えるだろう。
(文=編集部)