アルツハイマー克服のカギは"嗅覚"!? においを活用した検査と予防法が進化

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
aroma.jpg

香りを楽しみながら認知症を予防

 超高齢化が進む中、誰もが健康に歳を重ねたいと願っている――。

 2013年、厚生労働省研究班の調査によると、国内の65歳以上の高齢者のうち、認知症の人は推計15%(約462万人)に上ること(2012年時点)が分かった。認知症になる可能性がある「軽度認知障害(MCI)」の高齢者も約400万人いると推計された。65歳以上の4人に1人が認知症とその"予備軍"となる計算だ。

 その認知症のなかでも、アルツハイマー型認知症とヒトの嗅覚との間には、強い相関関係があることが、多くの研究で明らかになってきた。たとえば、その症状として最初に現れるのは嗅覚障害だ。

 米・シカゴのラッシュ大医療センターでは、54~90歳までの男女589人の嗅覚検査をし、その後5年間、アルツハイマー型認知症に移行する恐れのある認知障害の発現を調査した。

 その結果、30,1%の人が該当。嗅覚機能が低かった人ほど、認知力が低下するリスクが高いことが分かった。嗅覚テストで平均以下の成績だった人は、平均以上の人に比べて、認知力が低下する割合が50%ほど高かったのだ。

認知症リスク診断キットが発売に

 さらに、嗅覚障害がある人は健常者の4倍アルツハイマー型認知症になりやすいという研究もある。そうした知見をもとに2014年9月、日本のバイオ企業であるグローバルエンジニアリングが、家庭で手軽に検査ができる商品を開発・発売した。

 検査キット「はからめ」は、10枚のカードに閉じ込められたにおいを嗅ぎ、6つの選択肢から近いものを選んでチェックする。その回答をメーカーに送付すれば、1〜2週間で結果判定シートが戻ってくるというものだ。

 認知症の症状は、発症を確認した時点ではすでに治療困難な状況にあるケースが多い。これを比較的健康な状態から早期発見することで、病状進行の抑制や治療に役立てることもできる。嗅覚障害が必ず認知症に直結するわけではないが、現状のリスク判定は可能だ。

 さらに"におい"は、アルツハイマー型認知症の予防や改善にも役立つことが指摘されている。たとえばその原因のひとつとして、神経伝達物質のアセチルコリンの著しい減少があるということは広く言われているが、レモンなどの香りを継続的に嗅ぐことで、アセチルコリンの分泌量が増えたという報告もある。

朝晩のアロマで予防&治療

 アロマテラピー(芳香療法)による認知症の治療研究に長年取り組み、リードしているのは鳥取大学医学部だ。

 従来、アロマテラピーは幻覚や睡眠障害などの「周辺症状」に有効なことは分かっていた。さらに、認知症患者を対象にしたアロマテラピーと、認知機能テストの関連から、脳の神経細胞が壊れて起こる記憶障害などの「中核症状」にも効果的だということを明らかにした。特にアルツハイマー型認知症患者には効果的で、嗅覚が治療の決め手となりうるという。

 鳥取大学医学部教授の浦上克哉氏によると、効果的に嗅神経を刺激する組み合わせは、昼が「レモン+ローズマリー」(交感神経を刺激し脳を活性化)、夜は「ラベンダー+スイートオレンジ」(副交感神経を刺激してリラックス)。昼は午前中に2時間程度、夜は就寝前に取り入れるのが効果的だ。同大学では、ブレンドアロマオイルの商品化も手がけている。

 においをかぐことは脳を刺激する効果があり、その嗅覚が衰えてしまえば脳も衰えていくことを多くの研究が示している。日々の生活の中で、香を焚いたり、料理や花の香りを楽しむなど、意識してにおいに敏感になることが認知症予防の助けになるはずだ。
(文=編集部)

部下や同僚が「うつ病」になったら? リワークのプログラムの提供施設は全国200以上に拡大
インタビュー「職場でのうつ病の再発を防ぐ」秋山剛医師(NTT東日本関東病院精神神経科部長)

第1回:「障害」が疑われる人の<うつ休職>
第2回:「新型うつ」はどう治す?
第3回:部下や同僚が「うつ病」になったら?
うつ病で休職中の社員が、毎日決まった時間に病院に通い、同じうつ病の仲間とともに再発を防ぐためのプログラムを受けることが「うつ病のリワーク」と呼ばれ注目を集めている。

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

郡司和夫

こくらクリニック院長。1963年生まれ。1991…

渡辺信幸

新宿大腸クリニック院長。1988年、東京大学医学…

後藤利夫