連載第1回 グローバリズムと日本の医療

選挙の争点にならないTPP、果たして日本の医療制度は本当に崩壊するのか!?

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 外国人医師を日本に迎えることに反対する理由は理解に苦しむ。低賃金労働者を受け入れるよりも、医師、弁護士、博士号取得者等、世界の頭脳が日本に来てくれるのであれば、大いに歓迎したい。TPPに参加することで仮に外国で医師免許を得た人が日本に流入し、日本人医師よりも専門知識の水準が低かったり、腕が悪かったりというのであれば、自由競争の下、淘汰されていくであろう。結果的に、日本人であろうが、外国人であろうが、腕のいい良質な医師だけが残っていけばよい。

●国民皆保険の裏側にあるデメリットとは何か?

 日本の国民皆保険には勿論多くのメリットが存在する。端的に言えば、「誰でも、いつでも、どこでも、安価に医療機関で受診できる」のが最大のメリットといえよう。しかし大きなこのメリットの裏側には大きなデメリットもある。メリットとデメリットは表裏一体なのだ。メリットとデメリットを総合的に勘案しながら、「短期的にみて何が得か?」ではなく、もっと大きな視点で「長期的にみて、人間にとって何が伸び目につながるか?」という点を考えることも重要である。

 デメリット1:日本では、国家の力があまりにも強大になり、社会主義顔負けの、がんじがらめの規制がある。国民は医療保険を選ぶことができず、国家が定めた保険に強制的に加入させられる。国家が強制力を持った診療報酬を定める。国家が「高齢者医療制度等への拠出金」として、健康保険組合等から強制的に多額のお金を吸い上げる。これは強制的に私有財産を没収しているともいえる。このような犠牲を払うからこそ、「誰でも、いつでも、どこでも、安価に医療機関で受診できる」のである。健全な市民はこのような絶大な力を持ち、その権力を行使する国家を望むだろうか。

 デメリット2:現在の医療保険は「社会保険」というように、「保険」ということばを用いているので、大いに誤解が生じやすい。人は掛金を払っているので、給付を受けるのは当然の権利と考えている。しかし、国民健康保険等では掛金を免除されている者も多い。その人たちも、「社会保険」なので、最大の給付を受けて当然だと考えているようだ。私的保険であれば危険度に応じて掛金が決まるので、危険度の高い人は掛金が高くなる。社会保険の場合、社会的考慮によって危険度ではなく、所得金額によって掛金が決まる。さらに、税金がなし崩し的に社会保険に投入されている。もはや日本の医療保険、特に国民健康保険は保険の名前に値せず、「準公的扶助」といっても過言ではない。公的扶助であれば資力調査と扶養義務規定を厳格に適用すべきだ。簡単に税金に依存させるべきではない。

●社会保険なのか準公的扶助なのかを明確にすべき

 よく「保険は世代を超えた助け合い」という美辞麗句が用いられる。しかし、それは単なるもたれあいに過ぎない。自分のものは自分のもの、公共のものも自分のもの、という甘えの感覚を助長させるものである。社会保険料は今や目的税と何ら変わりない。国家は「税金」という言葉を避けるために、助け合いのための「社会保険料」と言っているに過ぎない。掛金を払えない人は、「社会保険」ではなく「準公的扶助」として対処すべきであろう。

 国民皆保険は表面的にはすばらしい、理想の制度のように見える。しかし、その制度を維持するために、裏では国家の力が強大となり、今後益々その力は大きくなっていく。さらに「準公的扶助」ではなく「社会保険」という言葉を使うことによって、実態を覆いかくしている。国家の力が益々強大になっていく一方で、市民は甘えの感覚に浸っている。もはや、自立した独立独歩の力強い市民を見出すのは難しい状況だ。国家に依存するのではなく、国家に貢献できるような力強い市民になることが必要だ。ジョン・F.ケネディの大統領就任演説(1961年1月20日)"Ask Not What Your Country Can Do For You"を座右の銘にしたいものだ。

連載「グローバリズムと日本の医療」バックナンバー

杉田米行(すぎた・よねゆき)

大阪大学大学院言語文化研究科教授。米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。

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