卵巣はほぼ拇指頭大で、子宮の両側にそれぞれ一個ずつ位置し、ホルモンの産生・分泌や生殖機能に重要な役割を営んでいる臓器です。表面は一層の円柱上皮に被われ、内層は神経や血管、大小の卵胞や黄体が存在します。
卵巣腫瘍はこの表面や内層の組織から発生し、良性・悪性、またはその境界型ばかりでなく、あらゆる種類の病態を呈します。卵巣腫瘍はあらゆる年令層に発症しますが、その組織型により好発年齢がまったく異なります。
卵巣がんとは、主に卵巣の上皮性の悪性腫瘍をいい、更年期以降に好発します。日本では年々増加の一途をたどっていて、1988年には女性10万人に7.4人の罹患率でしたが、2015年には10.2人に達すると考えられています。
その発症原因はまったく不明で、初期症状に乏しく、早期発見は困難なため、進行がんとして発見されることが多く、婦人科悪性腫瘍の中でもっとも死亡率の高い腫瘍です。組織型により、漿液性、類内膜型、粘液性、明細胞、未分化型などに分類されていて、それぞれ臨床像や経過が異なります。
初期には無症状で、特有の症状を示しませんが、腫瘍が大きくなるにつれ、下腹部の腫瘤感や腹部膨隆を認め、圧迫症状が出現するようになります。膀胱を圧迫すれば頻尿を呈し、直腸を圧迫すれば便秘などを訴えます。
腫瘤の増大とともに食欲不振や胸内苦悶を訴え、貧血を認めます。腫瘍が捻転を起こした場合は、突発的な下腹部の激痛を訴えます。通常は月経異常や不正出血などは認めません。
卵巣がんを早期に発見する唯一の方法は、内診により骨盤内の腫瘤を早期に発見することです。骨盤内に腫瘤を認めたら、卵巣性のものかどうか腫瘤発生の臓器の鑑別を行い、次いで良性・悪性の鑑別を行います。超音波検査やCT、MRIなどの画像診断により、発生臓器の鑑別は比較的容易であり、その特徴より、良性・悪性の推測もある程度可能です。腫瘤が充実性の腫瘍の場合、約85%が悪性であるといわれています。
さらに、卵巣がんでは、血液中の腫瘍マーカーは補助診断として極めて有用であり、必須の血液検査法です。数種の腫瘍マーカーを組み合わせ、総合的に判断しますが、CA125が高値を示す場合は卵巣がんである可能性が非常に高いといえます。
腹水をともなう場合は、腹水を採取し、細胞診を行い、がん細胞の有無を検索します。卵巣がんでは組織採取による直達診断が不可能なため、以上の方法にて間接診断を行いますが、術前に腫瘍の広がりや病理組織像を可能な限り把握することは、術式の選択や治療方針の決定に重要です。
基本的には手術により外科的に病巣を摘除しますが、転移や再発が疑われる場合は化学療法を行います。早期がんでない限り、子宮、両側付属器、大網、虫垂などを摘除し、可能な限り残存腫瘍を少なくし、さらに骨盤内および旁大動脈リンパ節を郭清します。そして、補助・併用療法としてがん化学療法を行います。進行がんで腫瘍の可及的摘出が不可能な場合は、腫瘍組織の生検のみを行い、試験開腹にとどめ、がん化学療法を数回行い、腫瘍の縮小を待って再度上記手術を施行します。
卵巣がんのがん化学療法には、寛解導入化学療法および維持化学療法があり、化学療法の効果は他のがん腫よりはるかに期待できるため、積極的に行われます。
なお、がんが片方の卵巣内に限局しているごく早期のがんで、妊娠を希望する場合は片側付属器摘出術のみを行い厳重な管理を行います。
卵巣がんのハイリスクグループとして、40〜69歳、未婚(既婚の2〜8倍)、不妊、早期閉経、30歳以前の無月経、長期の卵巣機能異常(著明な月経前緊張症、乳房緊満を伴う高度の月経異常)などが上がります。生活習慣としては動物性蛋白の多量摂取、喫煙(1日15本以上)、専門技術や管理職などです。
卵巣がんの早期発見が困難で、急速に増加していることを考えると、卵巣がんの好発年齢前より検診が必要ですが、子宮頸がんの細胞診のような簡単な検診法はまだ確率していません。大きな腫瘤は婦人科的診察で、発見できます。今後採血による腫瘍マーカーの検査やRT-PCR法という腫瘍マーカーの感度を上げた検査法が普及することで、早期発見が期待できます。
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