医学部受験で女子の差別は続く
2018年8月に東京医科大学で入試得点を不正に操作していたことが発覚した。これをきっかけに、全国81医学部における大学入試合否結果に男女差がどのくらいあるのか、調査が行われた。その結果、多くの大学で男子受験生よりも女子受験生のほうが、合格率が低いことが明らかになった。
(https://www.jiji.com/jc/article?k=2018090400819&g=soc)
9月4日に出た上記の時事通信社記事によると、東京医科大学以外に女子受験生の得点を不正に操作していたと回答した大学はなかったとのことだった。ところが、のちに、昭和医科大学、順天堂大学などが得点操作を認め、12月8日には不正が疑われる大学として新たに福岡大学、岩手医科大学、金沢医科大学が文部科学省の指摘を受けている。
筆者含め、大学受験生を多く送り出してきた教育現場としては、医学部入試において男女の扱いに差がありそうだということは「常識」のようになっていた。もちろん、得点開示を求めても、不正の証拠はつかめない。それでも、毎年生徒を送り出している側の「手応え」として、男女に差があると確信していた。
面接試験では女子にはハラスメントまがいの質問!?
複数の受験者を同じ医学部に送り出している高校であれば、「A男、B男が合格したのに、C子が不合格?あり得ない!」という体験を何度もしている。それが1年間だけ、1人だけであれば、「入試は水もの。そういうこともある」と考えるであろう。しかし、何年も、何人も同じことが繰り返されれば、疑いは確信に変わる。
医学部の入試には、面接が課されることが多い。同じ大学を同じ年に受験しても、男子と女子とでは質問内容がまったく違うことがある。女子には、ハラスメントにならないか?と疑うような質問をされることもある。そして、そういう大学は、得てして男子は合格し、女子は落とされる。
たとえば、国立のある大学医学部の地域枠推薦入試で、同じ年に受験した男子の方は、志望理由書について突っ込んだ質問を受けたのに、女子の方は「女性だけれど、地域医療に従事して大丈夫なの?結婚や出産はどう考えているの?」とワークライフバランスの話ばかりをされて、医学への思いはほとんど語らせてもらえなかったという実話がある。
ありがたいことに、筆者の地元である徳島大学は、女子の合格率が高いほどで、先述の全国調査においても男子と女子の合格率に有意差は見られなかった。他県から徳島大学医学部に進学してきた女子学生にヒアリングすると、「医学部を受験するのであれば、女子が合格しやすい大学にしなさいと高校の先生からアドバイスを受けて、徳島大学を受験しました」と匿名を条件に答えてくれた。受験生を指導している側からすると、女子が不当な扱いを受ける疑いの強い大学を敬遠させたくなるのは当たり前だ。
私立大学のみならず、国立大学でも我々が得点不正を疑っている大学はある。現在、まだ
得点不正を公表していない大学にも、得点操作が疑われる大学はある。高校現場は、気づいているぞと警鐘を鳴らしておく。
大学によっては、現役男女の得点率に差が出やすい問題を出題することで、男女の合格率に差が出ている場合もある。大学の名誉のために、それは付け加えておく。高等学校で教えていると、数学の空間ベクトルや複素数平面、物理などで得点率に男女差が出ることも実感している。もちろん、女子の中にもこうした分野を得意とする生徒はいるけれど、他の分野と比べると男女の得点に差がでやすい分野ではある。よって、そういった分野を狙って出題されると、どうしても女子が負けやすくはなる。この場合は、大学側が「この分野の力は、医学部にとって必要な資質です」と言い切ってしまえば、結果的に合格率に男女差が出ても、文句は言えないと筆者も思う。
しかし、試験において、男女の採点に差があるのではないか、何らかの操作をしているのではないかと疑いの余地がある大学は、今公表している大学だけではない。とくに、面接試験において、女子受験生を不利に扱っている大学は、一校や二校ではないはずだ。