インタビュー「スマホゲーム依存の実態と治療法」第1回:久里浜医療センター・樋口進院長

スマホでオンラインゲーム依存〜1日で課金15万円! 依存者は国内で420万人!?

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1日に15万円も課金するプレイヤーも

 常にアップデートされて新しい要素が追加される上、クリアという明確なゴールがないのも、オンラインゲームの特徴だ。さらに、ポイントやお金と引き換えに、アイテムなどがランダムで当たる「ガチャ」が引き起こす、「スマホゲームの課金」も問題になっている。

 2016年には、人気スマホゲーム『グランブルーファンタジー』のアンチラというキャラクターを出すために70万円課金したが、目当てのアンチラが当たらなかった人がいたことがネット上で広まり、問題となった。

 「患者さんから話を聞いていると、楽しくて『ガチャ』を引いているというよりは、目当てのアイテムが出てこないからイライラしてどんどん引いて、止められなくなってしまうという人が多い」

 「『ガチャ』が1回500円だとしたら10連ガチャで5000円、40連ガチャで2万円と、あっという間にやってしまえる。1日10万円、15万円と使ってしまう人も結構いますね」

 もっとも、久里浜医療センターのネット外来を受診するのは、親に連れられてきた未成年が多く、それほどお金を持っていないため、課金の代わりに時間を使う「無課金」プレイヤーが多いという。

 「『無課金でランクを上げないと、自分の力でやっていないように感じる。課金するのは恥だ』と思っている中高生も結構いますね。逆に課金である『ガチャ』にはまるのは、仕事をしてお金を稼いでいる大人が中心です」と樋口院長。

 学校に行かなくなる、昼夜逆転し、一日中ゲームをし、片時もスマホを手放せなくなるなど、生活に深刻な支障をきたすこともあるゲーム障害――。次回以降は、スマホゲーム依存の定義や治療法について、さらに掘り下げていく。
(取材・文=里中高志)

樋口進(ひぐち・すすむ)
精神科医。独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長。インターネット依存等の行動嗜癖、アルコール関連問題の予防・治療・研究などを専門とする。昭和54年、東北大学医学部卒。米国立保健研究所留学、国立久里浜病院臨床研究部長、同病院副院長などを経て現職。2011年に国内初のネット依存治療専門外来を設立。WHO専門家諮問委員、行動嗜癖に関するWHO会議およびフォーラム議長、厚生労働省アルコール健康障害対策関係者会議会長、同省依存検討会座長(2013年)、国際アルコール医学生物学会(ISBRA)理事長、国際嗜癖医学会(ISAM)理事などを務める。アルコール耐性を簡便に調べることができる「エタノールパッチテスト」の考案者でもある。著書に『スマホゲーム依存症』(内外出版社)、『ネット依存症』(PHP新書)など。

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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