スマホのチラ見は味覚も損なう
学会に先立ち『Journal of Experimental Social Psychology』(2017年11月6日オンライン版)に掲載されたDunn氏らの調査研究は、下記の2種類の方法によって行なわれた。
1つめの調査は、300人超の地域住民や学生の協力を得て実施された。各被験者に友人や家族とレストランで食事を取ってもらい、ランダムに「①テーブルに携帯電話を置いたまま食事してもらう群」「②携帯電話はしまって食事をしてもらう群」の2タイプに振り分けた。
その調査結果では、②群の「満足感の高さ」の一方で、「食事を楽しめなかった」とする②群の回答が多かった。満足度の評価スコア(7点満点)上でも②群よりも①群は0.5点低く、「気が散った」という述懐回答も多かった。
2つめの調査では、100人超の被験者を対象に、携帯電話に1日当たり5通のメールを1週間送るという実験方法が取られた。そして5通のメールが届く度に、前後状況や心理状態について、それぞれ7点満点で各自の報告を提出してもらった。
その結果、誰かと対面交流している状況下でメールが届いたり、それをチラ見している人々は「その場を楽しめていない」との心理的影響が読み取れた。
スマホ依存による「注意散漫」が幸福へを奪う
共同研究者の1人で論文の筆頭著者であるRyan Dwyer氏は「今回の研究結果は、すでに我々が感じている、あるいは感じてきたことを、裏付けるものとなった。
早い話、自分にとって大切な人と一緒にいる貴重な時、携帯電話を使っていれば(それをしまって接している時よりも)その時間が楽しくなくなるのだ」と語っている。
前述のごとく、ここ数年、スマホに代表される「ディスプレイ越しの日常活動」が及ぼす公衆衛生上の悪影響についての研究報告が増えている。
それぞれの示唆に曰く、画面漬けは「幸福につながらない」「自尊心や楽しさ、ひいては人生全体の満足度を損なう」「若者のうつ病/自傷/自殺の増加につながる」等々……。
要するに、スマホ依存者らの「注意散漫」の傾向が幸福への障壁になっている――そんな定義もある。
たしかに喫茶店での会話を楽しむよりも、互いにスマホ画面に見入るカップルをよく見かけるが「(関係に)集中していないな……」と他人事ながら想ってしまうもの。なかには、1本の電話や1通のメールで大喧嘩を始めるカップルもいたりするが、それはまた別問題である。
(文=編集部)