信仰に反する医療行為を医師は拒否できるか?トランプ政権が医療従事者の治療拒否権を容認!?

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患者の信仰の自由が問題になった「エホバの証人輸血拒否事件」

 さて、このような「医師の医療行為」は、患者の信仰の自由とどのように関わるのかを示した事件がある。いわゆる「エホバの証人輸血拒否事件」だ。

 宗教上の理由で輸血を拒否したエホバの証人の女性信者(悪性肝臓血管腫)が、インフォームドコンセント(説明と同意)なく無断で輸血手術を行った国、医師、病院に損害賠償(1200万円)を求めた訴訟事件である。

 訴訟では、絶対的輸血拒否(絶対的無輸血)特約に反して輸血を行った国の債務不履行責任と、輸血の可能性についての説明義務違反によって輸血の自己決定権を侵害した医師と病院の不法行為責任を質した。

 キリスト教系の新宗教であるエホバの証人は、聖書に「血を避けなさい」とする教義があることから、生命の危機に陥る恐れがあっても、輸血を拒否するとする絶対的輸血拒否(絶対的無輸血)を信念としている。細かい経過は省く。

 裁判は、1997(平成9)年3月12日、第一審の東京地方裁判所では、原告(女性信者)の請求をいずれも棄却。1998(平成10)年2月9日、控訴審の東京高等裁判所は、一審判決を変更し、原告の請求を一部認め、被告(国、医師、病院)に対して55万円の支払いを命じた。そして2000(平成12)年2月19日、上告審の最高裁判所は、上告を棄却――。棄却理由は以下の通りだ。

 「輸血は自己の宗教上の信念に反するため、いかなる場合にも輸血を拒否する権利は、人格権である。したがって、輸血する可能性があることを告げないまま手術を行い、輸血をしたため、インフォームドコンセントを怠ったことにより、原告の手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪い、人格権を侵害したことから、被告は精神的苦痛を慰謝すべき不法行為責任を負う」

 つまり、この訴訟事件は、患者が信仰上の理由で輸血を拒否する明確な意思表示をすれば、意思決定をする自己決定権(憲法13条)は人格権であることから、インフォームドコンセントを伴わない医療行為(輸血手術)は有責性と違法性があると認定している。

 信仰の自由と治療を受ける権利は、決してトレードオフ(二律背反)ではない。人間に幸福を求める願望があり、より健やかに生きたいと願う良心がある限り。
(文=編集部)

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