松野の死因は、どのように推論できるだろう?
このような病態と機序に基づけば、松野の死因は、どのように推論できるだろう。
生まれつきの心臓病の基礎疾患があったならば、致死性不整脈の可能性は高い。ただし、既往症がなかったならば、治療しなくてもよい不整脈だった可能性も残る。
欧米で実証された大規模研究によると、軽症の不整脈に対して強い薬剤を長期間用いれば、不整脈は消失するものの、薬剤による催不整脈作用や副作用のために予後が悪化しやすい。
現在、不整脈が見られても重症度が高くなく、重篤な心臓病がなければ、生活習慣の改善などを励行すればよく、積極的な薬物治療は行わないのが通例だ。
松野の死因。あのピチピチした18歳の夭逝は、どれほど想いを巡らせても承服しがたい。
若きアイドルの死は痛ましく、もの悲しい。アイドルは青春のシンボル、生き甲斐、希望だ。松野のインスタグラムを見れば、6000件以上のお悔やみコメントがある。
明けて2018年2月8日は1周忌。「私が何を待っているのか、当ててごらん!」と謎かけしてるように笑う。茶目っ気たっぷりに。
「私(ま~つ~の)りなです」(あみんの「待つわ」のノリで歌う)。いつもおどけて微笑んだ松野莉奈。いま何を待っているのだろう?18歳を抱きしめて。青いりんごのままで。甘酸っぱい夏みかんのままで。
(文=佐藤博)
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。