「月200㎞」がトラブルの過多を分ける
奥井氏はこうした知見から、「日常的な運動のしすぎが心臓に負担をかける」とともに「低テストステロン症を引き起こし、性機能の低下を招いた」と推測。テストステロンの低下による何らかの影響が、スポーツ大会でのケガや心停止などのトラブルにつながったのではないかと考えている。
では月にどれだけトレーニングをすると、テストステロンの分泌が急低下してしまうのか? それについて同氏は、45~55歳の市民ランナー44人(男性33人、女性11人)について、1カ月間の走行距離と血中テストステロン濃度との関係を調べた。
その結果、「月間走行距離が100~120km程度」の人が、男女とも最もテストステロン値が高いことがわかった。そして、「月間走行距離が200kmを超える」とテストステロン値が急に下がることも確認できたという。
月に200㎞という距離は、熱心に大会に参加する市民ランナーにとっては非現実的な数字ではない。初心者が月200㎞を目標にトレーニングを始めるのはごく普通のことだ。しかし、それに危険が伴うことを忘れてはいけない。「全身倦怠感」「不眠」「性機能低下」などの自覚症状が出た場合は、低テストステロンに陥っている可能性がある。
トレーニングはできるだけ「月120㎞を上限」にして、スイムやトレイルランニングなどを取り入れて質を上げること。また、「1度フルマラソンを走ったら、少なくとも3カ月のリカバリー期間を取る」ことを奥井氏は呼びかけている。
中高年ランナーはとかく頑張りすぎてしまう人が多い。元気で楽しく走り続ける続けるためにも「休息も大切なトレーニングの一環」であることを肝に銘じよう。
(文=編集部)