香川県で医師の過労死寸前の勤務実態が発覚
では、この医療現場の深刻さは対岸の火事といえるだろうか?
いや、不満の原因や意向のかたちに日米事情の違いこそあれこそ、わが国の現場も問題は山積している。「医師は労働者なのか――から議論を」「医師こそ<働き方改革>を」という記事がたびたび報じられている。
今年の9月初め、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が、勤務医らの時間外労働(残業)を月当たり「最長300時間上限」とする労使協定を結んでいた――という目を疑うような報道がされた。
その後、11月初めに香川県内の医師が<年2100時間超の時間外労働>をしていた事実が発覚。月平均で約180時間の計算となり、「過労死ライン」とされる月80時間を大幅に超えていた……。こちらの数字にも、思わず眼を擦った方が少なくないだろう。
医師の「燃え尽き症候群」と「自己犠牲」
現場では医師の過労死がくり返され、その長時間労働は医療の安全自体を揺るがしかねず、反面で自己犠牲を厭わない医師の働き方も問題視されている。
「国民の健康増進には精力的で熱心、かつ適応力に秀でた医師の力は必要不可欠だが、医師は他の職種の労働者と比べて『燃え尽き状態』となる頻度が高い点も考慮しないとならない」
「医療システムが機能不全に陥る兆候が見え始めている現在、その危機がいよいよ迫っていることを連邦議会や病院、保険企業の関係者に認識してもらう必要があるだろう」
これは他ならない、前掲の全米調査を主導した立場であるAMAのDavid Barbe会長の提言である。「燃え尽き」と「自己犠牲」は、わが国の医師にも懸念される事項だ。
来年10月から消費税率が10%に引き上げられる。病院は医療機器などの購入に消費税を負担するが、患者は非課税だ。そのため、消費増税は病院経営を直撃する。
ところが、増大する医療費を抑制するため、来年度の診療報酬改定では引き下げが検討されており、近年増加している病院・介護事業所などの医療・福祉事業の倒産件数はさらに増える可能性が高い。
「医は仁術」とされたのは昔のこと。高収入でも医者は割に合わないブラック職業――となれば、日本でも他職種への「転向組」が続出してくるかもしれない。
(文=編集部)