たとえ健康でも「肥満」は社会的コストを引き上げている(depositphotos.com)
「ぽっちゃりタレント」、さらに言えな「デブタレント(略して「デブタレ」)」にとって、太っていることは、仕事をする上での強力なアピールポイントであり、ある意味では芸風である――。
ところが最近大きな話題になったのは、お笑いタレントの松村邦洋さんが、約8カ月で30kgのダイエットに成功したことだ。お笑いトリオの安田大サーカスのメンバーであるHIROさんも、ダイエットの成果で注目を集めている。
ぽっちゃりタレントにどのような意識の変化が現れたのだろうか?
ぽっちゃりタレントが減量に取り組む背景には「視聴者側の強い健康志向」が?
「肥満の人のほとんどが、食生活を改善し、運動する習慣をつけることが大切だと知っている。しかし、こうしたアドバイスが減量にはつながっていない」とコメントしたのは北米肥満学会の広報を担当するテッド・カイル氏。
彼のこの発言に、肥満の人も、そうでない人も、同意するのではないだろうか。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こし、腰やひざの痛みの原因になるといった肥満の問題点は、さまざまなメディアを通して私たちに伝えられてきた。肥満が数多くの病気を招くことをすでに知っている人がほとんどだ。加えて、食生活を改善して運動すれば、やせられることぐらい誰だって知っているはず。
それでも減量をしないのは、「本人の意志の弱さが原因ではない」のかもしれない。肥満であり続けることに、「何らかのメリット」を感じている可能性がある。松村邦洋さんやHIROさんといったぽっちゃりタレントについては、太っているから愛される……。ここに肥満のメリットがある。
しかし、それは一昔前の話のようだ。現実としては、松村邦洋さんはやせた後で活動の幅が広がっている。そもそも「モノマネの天才」と呼ばれていたほどの才能の持ち主なので、体形は仕事とは関係ないのだろう。
ぽっちゃりタレントが減量に取り組む背景には、本人の健康問題はもちろんだが、「視聴者側の強い健康志向」にあるのかもしれない。タレントがあまりにも太っていたら、視聴者としては「この人は大丈夫だろうか」「突然死するかも」と心配で、素直に笑えないのだ。結果として好感度が下がりやすい。
「私はタレントではないから、好感度を上げる必要はない。太っていることで誰にも迷惑をかけていないし、今のままでいい」と思った人もいるだろう。やせるためのエネルギーを使わないことも、1つのメリットかもしれない。
しかし「太っている」ことで、実は周囲に迷惑をかけている。つまり、「社会的なデメリット」を生み出しているのだ。