自己免疫性疾患「ギラン・バレー症候群」とは?
大原が苦闘した難病(特定疾患)の「ギラン・バレー症候群」とは、どのような病か?
ギラン・バレー症候群は、筋肉を動かす運動神経に障害が起きるため、左右対称性の四肢筋力の低下、腱反射の消失、顔面麻痺、呼吸困難などの不快な症状を伴うのが特徴だ。急性特発性多発神経炎、急性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパシー、フィッシャー症候群とも呼ばれる。国内の発症率は人口10万人当たり1~2人(年間およそ2000人)。若年成人と高齢者に発症のピークがある。
発祥の原因は何か? 発症の1~3週間前に咳、発熱、咽頭痛、頭痛、下痢などの感冒症状を示す場合が多く、サイトメガロウイルス、EBウイルスによる感染やマイコプラズマ、カンピロバクターなどの細菌による感染が引き金になり、自己免疫的な機序を介して発症する。つまり、免疫システムが末梢神経を攻撃するために、主に軸索(神経細胞の長い枝の部分)を取り囲む髄鞘(ずいしょう)に神経障害が生じる自己免疫性疾患だ。
どのような症状が続くのか? 『メルクマニュアル18版』によると、発熱,頭痛,四肢痛の後、下肢から左右対称性の麻痺が起きるため、麻痺は数日間で躯幹から上肢、頭蓋筋に急速に上行し、脊髄神経が侵される。感冒症状や下痢の後は、1~3週間で急速な四肢や顔面の筋力低下が現れる。通常は2~4週間でピークに達し、進行が停止すると徐々に快方に向かい、発症後3~6カ月から1年でおよそ6割が完治する。
およそ3割は機能障害が残るが、感覚障害は軽い。だが、罹患者のおよそ3~5%が呼吸筋の麻痺、血液感染症、肺血栓、心停止などの合併症によって死亡するので、決して侮れない。また、舌や嚥下筋の支配神経に障害が出るため、しゃべりにくい、飲み込みにくいなどの症状も現れる。外眼筋の支配神経の障害によって物が2つに見える複視のほか、頻脈、不整脈、起立性低血圧、高血圧などが起きることもある。
治療では「血漿交換療法」「免疫グロブリン大量療法」「免疫吸着療法」などの治療が施される。
大原のギラン・バレー症候群は完治していなかったのだろうか?
このような根拠と機序から、大原の死因を考えよう。
大原がどのような検査・診断・治療を受けたかは確認できない。だが、たとえば、脳・脊髄を保護している脳脊髄液検査のほか、筋電図検査、末梢神経伝導検査が行われたかもしれない。さらに治療は、血漿交換療法、免疫グロブリン大量療法、免疫吸着療法などが行われたはずだ。
弟・政光の発言によれば、大原は治療に合わせて筋力を回復するのために、リハビリに精を出していたのは確かだ。ただ、先述のように、ギラン・バレー症候群は、呼吸筋の麻痺、血液感染症、肺血栓、心停止などの合併症だけでなく、頻脈、不整脈、起立性低血圧、高血圧などによって死亡するリスクがある。
大原のギラン・バレー症候群は完治していなかったのだろうか?
堪え難い難病に向き合いながらも、大原は、強く生きよう、生き抜こうと闘志を燃やしていたに違いない。そう信じたい。