クリニックに家庭血圧計を持参し測定精度を確認しよう(depositphotos.com)
世間には「高すぎ」ても「低すぎ」ても、不都合なものがある。物価、気温、目標、身長、プライド……。血糖値も血圧値も思い当たる。
とりわけ脳卒中の高リスク因子になる「血圧値」が、梅雨空や女心のようにあやふやなのは、不安この上ない。ましてや「家庭血圧計」の測定値に大きな誤差があれば、何を信じていいのか右往左往するだけだ。
家庭血圧計による測定値の69%は5mmHg以上、29%は10mmHg以上の誤差が
アルバータ大学(カナダ)のJennifer Ringrose氏率いる研究チームは、家庭血圧計の測定値のおよそ7割に誤差があったとする研究を『American Journal of Hypertension』7月号に発表した。
研究チームは、オシロメトリック法の家庭血圧計を自宅に保有し、上腕の周囲長が25~43cmで収縮期血圧(SBP)80~220mmHg、拡張期血圧(DBP)50~120mmHgの患者85人(平均年齢66.4歳)を対象に、「家庭血圧計で測定した血圧値」と「訓練を受けた測定者がゴールドスタンダードである水銀式血圧計」で測定した血圧値を比較した。
その結果、「家庭血圧計」による測定値の69%は5mmHg以上の誤差があり、29%は10mmHg以上の誤差が認められた。
クリニックに家庭血圧計を持参し測定精度を確認しよう
この誤差をどのように判断すべきだろう?
Ringrose氏は「血圧値が不精確なら、健康に深刻な悪影響が及ぶ可能性がある。監視と高血圧治療によって最悪の事態は回避できるものの、家庭血圧計の測定値が精確であるかどうかを確認しておく必要がある」と指摘する。
糖尿病に関連した心疾患治療が専門の米ノースウェル・ヘルス・サウスサイド病院のRobert Courgi氏は「家庭血圧計の精度が上がれば、高血圧治療が成功する確率がさらに高くなるはずだ」と話す。
Ringrose氏は「家庭血圧計の測定値を血圧管理の主な指標とする場合は、クリニックでの測定値と比べ、複数回の測定値に基づいて治療を決定すれば、家庭血圧計による誤差は最小限に抑えられる。したがって、家庭血圧計は患者自身が血圧を管理するだけでなく、医師が患者の全般的な状態を把握できる有効なツールになる」と説明する。
米スタテン・アイランド大学病院の脳卒中専門医であるYasir El-Sherif氏は「小規模な研究なので、早急に結論づけられないが、懸念すべき結果だ。家庭血計圧を使用するなら、1度はクリニックに家庭血圧計を持参し、クリニックでの測定値と比べれば、精度を確認できるだろう」と勧める。