肥満税の実施国では賛否両論!
2016年10月には、世界保健機関(WHO)が、砂糖を多く含む清涼飲料水への課税強化を加盟国・地域に呼びかけている。
WHOによると、世界の肥満人口は1980年から2014年にかけて2倍以上増加し、成人の約40%が太りすぎだという。「課税で加糖飲料の価格を20%引き上げれば、消費を20%減らす効果がある」ということだ。
しかし、実施国では賛否両論がある――。
たとえば、ソーダ税を導入したメキシコでは、同じ年の末までに清涼飲料水の販売が10%減少したという。その一方で「ソーダをやめた人は、同程度、糖分が含まれるオレンジジュースを飲んでいる可能性がある」との指摘もあり、そこは未解決だ。
メキシコにおける取り組みが肥満問題を解決できるかは、長期的な観察が必要だろう。
また、2011年に世界で初めて食品に含まれる「飽和脂肪酸」の量に対して課税を始めたデンマークは、翌年早々に制度を廃止した。
理由は、食品価格の高騰により、国民がこぞって隣のドイツに出かけて。バターやクリーム、チーズなどを買い求めたからだ。結局、高脂肪食品の消費は減らないうえ、国境近くの商店が立ち行かなくなる事態となり、この取り組みは失敗に終わった。
同じような制度は、日本では考えられない?
日本でも肥満税を取り入れる日は来るのだろうか?
砂糖税については、厚生労働省の有識者懇談会が、砂糖をアルコールやタバコとともに健康リスクと位置づけ、課税強化を検討すべきだと提言している。
しかし、日本にはサトウキビの生産者を保護する「調整金制度」があり、それを消費者が負担している。今も割高な砂糖を買っているところに課税となれば、業界の猛反発は免れないだろう。
また実際、諸外国に比べると日本は肥満問題の深刻度がまだ低い。厚生労働省の資料によると、40~60代の日本人男性の約3人に1人は「ボディマス指数」が25以上の「肥満」という結果が出ているが、WHOやアメリカでは30以上が「肥満」となる。そうなると、日本の肥満率はアメリカの10分の1程度だ。
いずれにせよ、限られた一部の食品が肥満を引き起こしている訳ではない。肥満対策の基本は、一人ひとりが健康に良い食事を理解し、バランスの良い食生活を送ることだ。各国のこうした政策が本当に肥満の改善につながるかは、中長期にわたって見守るべきだろう。
(文=編集部)