シリーズ「傑物たちの生と死」第22回

キューバの革命家カストロ死す!計638回の暗殺未遂は「最も命を狙われた男」としてギネス記録に

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最高指導者として半世紀も君臨するも、晩年は「老い」と「病」との戦い

 革命後、1965年から2011年までキューバ共産党中央委員会第一書記に就任、1976年から2008年まで国家評議会議長(国家元首)と閣僚評議会議長(首相)を兼務。共産党独裁体制を敷き、国家の最高指導者として半世紀にわたって君臨する。

 だが、異変が起きる。2000年頃から体力が衰え、長時間の演説が短くなる。79歳、2006年7月、大腸に急性疾患を発症し、出血が続いたため、外科手術を受けるが、回復しない。81歳、2008年、国家評議会議長と軍最高司令官を辞退。2011年、党第一書記を辞任。実弟のラウル・カストロを国家評議会議長に選出。キューバ革命以来、およそ50年にわたり務めたすべての公職から退く。

 2014年12月、アメリカとの国交正常化交渉が始まる。2015年4月、実に59年ぶりにアメリカとキューバの首脳会談が行われ、7月にアメリカとの国交を回復するに至る。

 89歳、2016年4月、第7回キューバ共産党大会の閉会式にジャージ姿で出席して10分間演説。「私がここで話すのはおそらく最後だ」と語る。2016年9月、安倍晋三首相と会談、G7首脳との最後の会見となる。

 2016年11月25日、午後10時29分に昇天。享年90。死因は公表されていない。遺言に基づき遺体は火葬され、革命発祥の地サンティアーゴ・デ・クーバで国葬後、埋葬される。

 「人間、死ぬときはどこにいても死ぬ。自分の命を惜しんで、こそこそ隠れているような指導者に一体誰がついてくるというのだ。どんなに貧しくても飢えて死ぬことはない国、それが祖国キューバだ!」

民衆のための国家をめざすキューバ、国家のために民衆を蔑ろにする北朝鮮!

 1492年12月27日、クリストファー・コロンブスがキューバに到着し、スペイン人が全土を征服する。19世紀の独立戦争、米西戦争を経て、1902年に独立を勝ち取ってから100有余年。社会主義国家の実現に邁進してきたキューバ。その無謀とも見える壮大な実験を受入れ、過酷な試練に耐えながら、社会主義国家を成功させた。

 だが、20世紀の同時代に失敗した国家がある。北朝鮮だ。

 その決定的な分岐点は何か? 民衆のための国家をめざすキューバ、国家のために民衆を蔑(ないがしろ)にしても、顧みない北朝鮮だ。つまり、国家の戦略や命運は、社会主義と資本主義というイデオロギーの違いではなく、一国のリーダーが民衆をどのように考え、どのように民衆を導くかによって決定されるのだ。

 グローバリズムからアンチグローバリズムへ。エリート主義から大衆迎合主義へ。トランプ大統領の出現は、アメリカの国家戦略も、世界の趨勢も変質させつつある。

 民衆を惹きつけて離さないカリスマ性。巧みなメディア操作。個人崇拝を嫌い、私利私欲を捨てる潔癖さ。豊かなヒゲをたくわえ、葉巻をくゆらし、人なつっこい眼差しを投げる。野球帽やアディダスのパーカーを愛し、日本も長時間の演説も大好き。ギネス記録の「最も命を狙われた男」フィデル・カストロ。フィデルは、キューバに起きる未来の奇跡を信じて永眠している。

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

シリーズ「傑物たちの生と死の真実」バックナンバー

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