世界保健機構(WHO)が通称「ソーダ税」を呼びかけ
折しも10月11日、世界保健機構(WHO)は、「糖分を多く含む飲料に課税する」よう加盟国・地域に呼びかけた。通称「ソーダ税」とも呼ばれ、商品価格の引き上げによって消費量の抑制を目論み、肥満や糖尿病および虫歯患者を減らそうというのがWHOの狙いだ。
つまり、病気を減らし、命を救い、医療費も抑えられて、そのぶんの税収を医療や教育財源に回せるという一石数鳥のいいことずくめ。
こうした健康リスクをともなう飲食物への課税化が勢いづいている背景には、政策効果を測定できる「計量経済学(Econometrics)」の進化が見逃せないという。
「ペプシコ」が2025年を目標に、100キロカロリー以下に抑える決断
WHOの研究報告書によれば、糖分の摂り過ぎは(水分補給などの精神的依存性も高い)飲料類に依拠する面が強く、缶製品の場合は1缶平均でティースプーン10杯分もの砂糖が含まれているとか。
なかでも糖分の高い飲料を1日1缶以上愛飲する人の場合、(日本人の大半を占める)2型糖尿病になる確率がほとんど飲まない人と比べると26%も高いそうだ。
WHOの前掲報告書には、課税によって価格を2割引き上げた場合、対象飲料の消費量自体が2割以上減るという米国の研究成果も引用されている。
また、ノースカロライナ大学の教授陣の分析では、2014年に課税された飲料類の購買量が平均6%減なのに対し、課税対象外の飲料が4%増、とりわけミネラルウォーターの伸びが顕著だったという「ソーダ税効果」も報告されている。
こうした健康志向+課税促進からの「炭酸飲料離れ」に根負けしたのか、米国の大手飲料メーカー「ペプシコ」は17日、世界各地で販売する自社製品の砂糖含有量を大幅減とする方針を発表した。
2025年を目標に3分の2以上の製品について、砂糖のカロリーを12オンス(約355ml)あたり100キロカロリー以下に抑える苦渋(苦汁)の決断を同社は下した。
<加糖天国>ニッポンはWHOに背を向ける?
一方、わが国の場合、いわゆる肥満税(fat tax)に対する意識はまだまだ低く、霞が関のお役人方も海外の趨勢を「静観中」「勉強中」という塩梅。キャラクターグッズ依存の「お子さまセット」が健康リスク面から問題視される流れは今のところ、気配さえ感じられない。
しかも斯界の外資系各社は「日本はアジア最大のハンバーガー市場」と位置付けて、高級ハンバーガーが続々上陸中。とりわけ最近の銀座界隈では国内組も参戦しての「2016年高級バーガー旋風」が吹き荒れているという。
もちろん話題の尖端店に並ぶのは個人の自由が、くれぐれも「セット注文」の際にはドリンクの選択肢に気を配ろう。
(文=編集部)